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早稲田大学漕艇部/ボート 
「春の風物詩・早慶レガッタに挑む」 

text by

芦部聡

芦部聡Satoshi Ashibe

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photograph bySatoshi Ashibe

posted2010/04/13 06:00

「絶対勝ちます」と意気軒昂。「負けたらOBに怒られます」

「絶対勝ちます」と意気軒昂。「負けたらOBに怒られます」

―――伝統の早慶レガッタに伝統のとんかつあり―――

 東京五輪の会場にもなった埼玉県の戸田漕艇場は、ちょっとした学生街だ。東大、一橋、東工大、日大など在京大学のボート部がこの地に合宿所を構え、連日オールを握っている。

 夜明け前の午前4時30分。早稲田大学漕艇部の部員たちが三々五々岸辺に集まってきた。3月下旬とはいえ、早朝は身が引き締まる寒さである。入念なストレッチで体をほぐすと、全長約17m、重量は100kg近くある9人乗りのエイト用のボートを運び出す。早稲田大学と慶応大学の対校戦“早慶レガッタ”を1カ月後に控えたこの日は、競技会場となる隅田川でレース本番を想定した特訓がある。荒川を経由して、戸田漕艇場から隅田川まで約20kmの距離をボートを漕いでいくのだ。

「以前は隅田川までトラックでボートを運んでいたこともあったんだけど、漕いでいったほうが練習になるからね。体力的にはきついだろうけど」と岡本剛監督は笑顔で仰る。

溺れる危険を感じつつ隅田川の練習を見学。

<朝> カップラーメン、カロリーメイト、バナナ。

 荒川と隅田川の合流地点に車で先回りしたマネージャーが、ブルーシートを敷いて、朝食の準備をはじめる。用意したのは、カップラーメンにカロリーメイト、そしてバナナだけ。「満腹でボートを漕ぐのはしんどいので、これぐらいでちょうどいいんです。おにぎりやパンを持参する部員もいますよ」と教えてくれた。

 朝焼けで川面が染まった午前6時過ぎ、男子エイト2艇と4人乗りの女子クォドルプル1艇が到着し、ボートを岸にあげる。女子部員は行儀良く座っているが、男子部員はマグロのようにゴロゴロと寝転ぶ。爽やかさからはほど遠い光景である。軽食を口にすると、7時過ぎにふたたび艇に乗り込んだ。

「せっかくだから練習をご覧になりますか」

 監督の乗るレジャーボートに同乗して練習を見学させてもらえるという。早春の隅田川クルーズが楽しめると喜んだが、舵を取る女子マネージャーの運転はかなり荒っぽい。

「波を立てるためにわざと蛇行運転をしてるんですよ。むかしの川岸は土手が波を吸収してくれたけど、いまはコンクリートの壁が波をはね返すから、意外と水面が荒れる。必ずしも穏やかなコンディションでレースができるとは限らないからね」

 監督の説明に納得しつつ、転げ落ちないようにボートの縁をしっかりとつかむ。建設中の東京スカイツリーをじっくり眺める余裕はない。20分ほどで早慶レガッタのスタート地点となる両国橋に到着すると、ピッチをさらに上げて、寸分違わぬタイミングでオールを漕ぐ。3000m先にあるゴール地点の桜橋を通過し、河川敷に戻ると、全力を出し尽くした男子部員はブルーシートに倒れ込んでマグロと化した。

<次ページへ続く>

【次ページ】 早稲田の名物食堂のオヤジさんがつくる寮の食事。

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