Number on NumberBACK NUMBER

出来高契約の日米差。
~イチローの年俸の内訳を見る~ 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2012/02/16 06:01

出来高契約の日米差。~イチローの年俸の内訳を見る~<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

今季限りでマリナーズとの5年契約が切れるイチロー。球団側はシーズン中の契約延長はしない方針を出しており、今季終了後の動向に注目が集まっている

 キャンプインの時期は、新人や移籍組が注目を浴びる。

 今オフは近年になく、多くの大物選手が新しいチームに移ったから、このキャンプは話題性の高い選手が多い。

 その中で、プロ野球が一つの曲がり角に来ていることを示した選手がいた。FAでソフトバンクから巨人に移った杉内俊哉だ。移籍した理由の一つは、ソフトバンクの年俸提示が、成績に応じた変動制だったこと。いわゆる「出来高契約」だ。杉内としては、自分が信頼されていないように感じたのだろう。

 ソフトバンクの2011年日本人選手の総年俸は31億6650万円でパ・リーグトップ。これに実績ある外国人選手が4人いたから、選手総年俸は40億円前後だったはずだ。

 ソフトバンクは、観客動員はずっとパ・リーグNo.1。九州での収益力は高い。しかし、消費者物価指数を見ると、'11年も日本の物価は前年より下がっているし、九州の平均賃金は関東、関西、東海より低い。こうした現実を考えると、チケット料金やグッズを値上げして、いま以上に球団の収入を増やすことは難しい。フロントとしては、支出の増加を抑えなければならない状況なのだろう。

打撃成績における出来高の基準は“打席数”だけ。

 年俸変動制の具体的な内容は明らかになっていないが、杉内が不満を感じていたことは間違いない。球団と選手、双方が納得できる出来高というのは、ないものだろうか。

 こうした契約方法に関して、米大リーグでは1976年にFA制が始まって以降、年俸の高騰とともに様々な試行錯誤が行なわれ、現在一つの結論が出ている。それがどのようなものか、イチローの契約を例に見てみたい。

●イチローのインセンティブ(出来高)内容
  '01年 '02年 '03年 '04年 '05年 '06年 '07年
200打席 40万 60万
250打席 80万 120万
300打席 120万 180万
350打席 160万 240万
400打席 5万 5万 5万 10万
450打席 200万 300万
500打席 15万 15万 15万 30万
600打席 25万 25万 25万 50万
球宴ファン投票 5万 5万 5万
最多得票の場合 7.5万 7.5万 7.5万
球宴監督選出 2.5万 2.5万 2.5万
ア・リーグMVP 15万 15万 15万
リーグ優勝決定戦MVP 5万 5万 5万
ワールドシリーズMVP 10万 10万 10万
新人王 7.5万
ゴールドグラブ賞 5万 5万 5万
シルバースラッガー賞 5万 5万 5万
※単位はドル

 イチローはマリナーズに移籍した'01年、最初に3年契約を結んだ。当時の報道によると、基本年俸は1年目から400万ドル、200万ドル、300万ドル。契約当時のレートで400万ドルは約4億6000万円だった。イチローのオリックス最終年俸は推定5億3000万円だったから、マリナーズに移籍して基本年俸は下がったことになる。日本人の野手は初めてだったから、まずは低めでスタートして、その上で、活躍した場合のインセンティブ――出来高を設定したわけだ。

 しかし別表に示した通り、打撃成績における出来高の基準は打席数だけだった。最高で450打席(120試合程度)をクリアすれば1年目から200万ドル(約2億3000万円)。'02年だけ出来高がないのは、この年にストライキの可能性があったからだ。その他、最多得票での球宴出場に7万5000ドル(約863万円)、ア・リーグMVPに15万ドル(約1725万円)など、いわゆるタイトル料に当たるものがいろいろ設定された。結果的に1年目の総報酬は、640万ドル(約7億3600万円)になっている。

【次ページ】 高給の選手が増える日本のプロ野球はどうするべきか?

<< BACK 1 2 NEXT >>
1/2ページ
関連キーワード
イチロー
シアトル・マリナーズ

ページトップ