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<日本男子最高位の自信> 錦織圭 「この1年でトップ10を狙いたい」 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byShizuka Minami

posted2012/01/06 06:00

<日本男子最高位の自信> 錦織圭 「この1年でトップ10を狙いたい」<Number Web> photograph by Shizuka Minami
堅実さを追い求めた日々で掴んだものは強者の勝ち方だった。
遂には、冷静に相手を追い詰めるテニスで世界ランク1位を撃破。
日本テニス界のホープはさらなる躍進を誓い、トップを目指す。

 2011年の全豪とウィンブルドン、全米を制した王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に堂々の逆転勝ち。10月末に開幕したスイス室内で、錦織圭は日本男子として初めて世界ランク1位を破る快挙を成し遂げた。'11年シーズンにトップ10選手から奪った3つ目の勝ち星である。翌週のランキングで錦織は24位に上昇し、日本男子の歴代最高位を大きく更新した。

 錦織の'11年は堅実さを追い求める日々だった。シーズン開幕前、アンドレ・アガシらを指導したブラッド・ギルバートをコーチに招いた。『ウイニング・アグリー』(直訳すれば「醜く勝つ」)という著書を持つ新コーチは錦織に、格好よく勝とうとするなと説いた。無駄にリスクを冒さないこと、守備力を上げること、そうして全体的にミスを減らすことを求めたのだ。

 '11年1月の全豪オープン。3回戦進出を決めた錦織は「100%ではないが、理想とするテニスができた」と満足そうな表情を見せた。ミスは1セット平均9本足らず。コーチが期待する堅実なテニスを早速、披露したのだ。だが、そのテニスは少しも錦織らしさのないものだった。彼の魅力である自由奔放さが影を潜めていた。1本で形勢を逆転するスーパーショットも数えるほど。確かにミスは少なかったが、おとなしすぎる優等生のプレーだった。

世界1位を目指す錦織に、名伯楽が授けた“堅実さ”という帝王学。

 全豪は3回戦で世界ランキング9位のフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)に完敗。

「今は守りを重点的にやっているが、攻めないと勝てないので、その判断力をつけたい」

 こう語った錦織。落胆の色は隠せなかった。堅実なテニスと守備的に戦うことは必ずしもイコールではない。それを痛感したのだろう。今は守るべきか攻めるべきか、錦織はまだ、その基準を見定めることができずにいた。

 選手には、幼い頃から磨き上げてきた自分の戦い方がある。ギルバートに指導を仰ぐ前の錦織は、打って勝ってきた選手だ。

「攻めて勝ちたかったし、そうしないと上にいけないと思っていました」

 強烈なサーブこそないが、コースやテンポを変えながら、自在にショットを展開する力はジュニアの頃から群を抜いていた。創造性豊かなファンタジスタに、ギルバートは堅実さを求めた。世界1位を目指す錦織に、名伯楽が帝王学を授けたのだ。

【次ページ】 葛藤や不安と闘いながらも新しいスタイルを追求。

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