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プロ3年目の中田翔、由規、唐川。
「ビッグ3」飛躍の年を徹底検証。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/03/27 08:00

プロ3年目の中田翔、由規、唐川。「ビッグ3」飛躍の年を徹底検証。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

由規は剛速球へのこだわりを捨てることで飛躍した。

 由規の場合。

 高校時代に計測した157キロの速球が、逆に1年目の右腕を苦しめた。

 プロ入り当初は、目指す投球スタイルについてこのように話していた。

「速いボールを投げようと意識しすぎると、どうしても力んでしまって失敗することが多いので、プロではスピードにはあまりこだわらず安定したピッチングを目指したい」

 とは言ったものの、1年目は夏が終わるまで二軍暮らし。理由は明らかだった。

「ストレートに頼ってしまっていた部分があって。一軍で通用するためには、やっぱりコントロールが大事なんです」

 一軍デビューを果たすと、プロの投手としての自覚が芽生えた。剛速球にはこだわらず、もうひとつの生命線であるスライダーを効果的に織り交ぜる投球にシフト。2年目には5勝10敗と大きく負け越しはしたものの、年間通してローテーションを任された。

 そして3年目の今年。キャンプで直に彼を見て驚いた。全体的に体が大きくなっている。そのことを本人に確かめると、強調するように胸板をポンっと叩き、「はい。結構、順調にやれています」と笑顔をのぞかせた。

 筋肉がついたことで投球のバランスがよくなった。オープン戦では3試合で16回を投げ防御率1.13。四球も少なくなり、ボールを受けた相川亮二も「去年とは別人」と信頼を寄せるほど安定感も身についた。先発陣が不安定ななか、チーム躍進のカギは由規の右肩にかかっているといっていい。

すでに成熟の域にはいりつつある唐川侑己。

 唐川侑己の場合。

 3人のなかで最も早く一軍デビューを果たしたのが彼だった。初登板初勝利の快挙を成し遂げると、次の試合ではドラフト制度施行後の高卒新人としては史上7人目となる無四球完投勝利。初登板から2連勝は史上5人目と、好スタートを切った。

 この結果は、唐川がプロ入り前から抱いていた意識があったから。

「ピンチの場合、高校では『三振で抑えれば』と思っていましたけど、プロでは僕の真っ直ぐはまだまだ通用しないので、変化球を織り交ぜてゲッツーを取れるような投球の幅を身につけていきたい」

 1年目の序盤はそれがはまった。変化球主体の投球でシーズン5勝を挙げたものの、ひとたび甘いコースに入れば痛打される、といったプロのレベルの高さを経験した。

 2年目も同じ勝ち星だったが、自身が高校時代から「持ち味」とする速球の割合も増え、変化球の組み立てもようやく板につき、1年間ローテーションを守ることができた。

 この2年間で身につけたものが、3年目の今年、開幕第3戦で発揮された。精度が高まった変化球でカウントを稼ぎ、ストレートは無理にストライクを取りに行かず、釣り球のようなコースで空振りを奪う。これで強打の西武打線を5安打2失点に抑えた。

 総合力No.1と呼ばれた投手は今、それこそトータルで成熟過程にきている。

【次ページ】 期待通りの数字を残し、3人は一流選手になれるか?

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