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なでしこに中国流アウェーの洗礼!
五輪アジア最終予選、現地プレビュー。 

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河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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photograph byKYODO

posted2011/08/30 11:35

なでしこに中国流アウェーの洗礼!五輪アジア最終予選、現地プレビュー。<Number Web> photograph by KYODO

済南の空港に降りた途端に、中国メディアと現地の野次馬がなでしこたちに殺到! 取材許可エリアも無視する中国メディアに、空港は大混乱となった

なでしこの“テクニック”がぬかるみの中に消える!?

 ぬかるみ、水が浮いたピッチでの試合は、細かなステップや精緻なトラップ、ピンポイントのパスといったお家芸をなかなか発揮できない。かといって大きな展開をしようにも、なでしこにはキック力のある選手が不足しているし、ロングパスで組み立てるサッカーにも慣れていない。

 一方、重馬場で力を発揮するのが、パワーのある選手を揃えたチーム、つまりオーストラリア、韓国、北朝鮮、中国といった国々である。長いボールをスペースに放り込み、遠目の距離からシュートを放ち、馬力のあるドリブルで敵を蹴散らしと、割り切った試合ができる。

 つまり、日本とタイ以外のすべての出場国が、足元の悪いピッチをものともしないのだ。

 いやむしろ、世界一になったなでしこの武器が奪われるのだから、悪天候は望むところかもしれない。そして唯一のお仲間であるタイにしても、乾いたピッチほど技術の差がつかない条件は大歓迎だろう。僅差での敗戦に持ち込めれば、それはタイにとって勝利に等しいし、逆に日本にとっては総得点や得失点差の面で大きな痛手だ。

晴れたら晴れたで、圧倒的なスピードを誇る敵と戦う難局が待つ。

 文字通り、不穏な雲行きになっている済南ではある。

 ただし中国のスタジアムは、素晴らしい水はけのピッチを持っている場合がある。北京五輪グループリーグでのノルウェー戦を現地で観戦した日本人はあまり多くないかもしれないが、あの時の上海は試合開始30分前まで激しい雷雨が降り続いていた。しかしいざ試合が始まってみると、多少の水しぶきこそ上がっていたもののピッチはまるでぬかるんでおらず、きれいにボールが走ったのだ。まるで、ホーム戦ではパスがよく回るようにあえてピッチに水をまくバルセロナの試合のように。

 五輪予選の試合は済南市内の2カ所で行われるが、どちらの会場もあの上海体育場のようなピッチであることを期待したい。

 が、そうなると――あるいは好天に恵まれると――今度はスピードという厄介な問題と直面しなければならない。

 W杯のイングランド戦でもアメリカ戦でも、日本は敵のロングボール一本で快足FWにDFの裏を取られて失点した。また8月19日に行われたなでしこジャパン対なでしこリーグ選抜のチャリティーマッチでは、後半にリーグ選抜がスピードのあるアタッカーを投入すると、なでしこ守備陣をパニックに陥れた。

 今回の五輪予選の対戦国にも、同タイプの選手は少なからずいる。

【次ページ】 爆発的スピードを誇る敵FWと、気になる審判の噂とは?

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