『SRC』は6月20日に行なわれる次回大会を含めて、今年4~5回の興行を予定。K-1との交流、対抗戦も視野に入れているという

『SRC』両国大会が露呈した
物語無き“大会”の限界。

橋本宗洋 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Norihiro Hashimoto

photograph by Susumu Nagao

『SRC』両国大会が露呈した物語無き“大会”の限界。

 3月7日、両国国技館で開催された『SRC12』に、大会としての問題は見受けられなかった。第1試合からメインのミドル級タイトルマッチまで、期待の新鋭や豊富なキャリアを持つベテランが次々と登場。スピードとテクニックが持ち味のフェザー級からパワーと迫力のヘビー級まで、各階級の試合がバランスよく配置されてもいた。

 全8試合中、5試合が一本・KOでの決着ということもあり、決して退屈な内容ではなかった。特に右ストレートから左ハイキックという爆発的なコンビネーションでKO勝利を収めた真騎士は、『SRC』にとどまらず日本ライト級屈指の注目株と言っていいだろう。

欠けていたはプロのイベントとしての“世界観の共有”。

 それでも、この『SRC12』の全体的な印象は散漫なものになってしまった。瞬間的に盛り上がる場面こそあるものの、大会を通した熱気や“うねり”のようなものが決定的に欠けていたのだ。大会終盤には、外国人の観客がシチュエーションに関係なく発するチャントばかりが耳に飛び込んできた。

 そうなったのは、この『SRC12』が“大会でしかなかった”からだろう。大会としては問題がなくても、プロのイベントとしてはもの足りなかったのだ。

 大会とは、選手たちが頂点を目指して競技を行なう場である。出たい人間が出て、その世界に理解のある人間が見るものだ。それ以上でもそれ以下でもない。そういう“大会”がスケールを広げ、多くの人々を熱狂させ、チケットを買わせる“プロのイベント”になるためには、世界観の共有が必須となる。

 ボクシングの世界タイトルマッチやオリンピックに注目が集まるのは、その権威が共有されているからだ。サッカー日本代表が目標に掲げるW杯ベスト4入りが論議の的になるのも、その難しさが共有されているからにほかならない。

 しかし『SRC』は、『戦極』という名称で旗揚げしてからまだ2年である。まして格闘技界は様々なプロモーションがあり、タイトルも乱立している状態。ベルトの権威、価値観が共有されていない中で行なわれる闘いは、それだけで観客の心を沸き立たせるものにはならない。タイトルマッチも、タイトルを目指して行なわれるワンマッチも、選手には失礼な表現になるが“ただ勝ち負けを競っているだけ”に見えてしまうのだ。

<次ページに続く>

► 【次ページ】 もし、そこに“物語”があったなら――。

筆者プロフィール

橋本宗洋

橋本宗洋

1972年、茨城県出身。大学在学中に雑誌『格闘技通信』でアルバイトを始め、谷川貞治氏(現・K-1イベントプロデューサー)が編集長を務めた『SRS・DX』編集部を経てフリーに。総合格闘技からキック・ムエタイ、女子格闘技まで、興味の赴くまま取材しつつ、ここ数年は映画レビューも執筆。格闘技と映画、少年時代からの二大好物を仕事にしてしまったため、現在の楽しみは大会取材後に仲間と飲む酒のみというズサンな独身生活を送る。


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