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バルサとレアルでリーガが破滅する!?
「2強18弱」の歪んだ経済バランス。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/08/10 10:30

バルサとレアルでリーガが破滅する!?「2強18弱」の歪んだ経済バランス。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

CL決勝後にビッグイヤーを頭にのせるイニエスタと彼を追うテレビクルー

中堅6クラブが平等分配を提案するが足並みは揃わず。

 セビージャ、ビジャレアルを中心とした中堅6クラブ、通称「G-6」は、このような不健全な分配方法を改善すべく、長らく放映権の一括管理と平等分配を求めてきた。

 昨年10月、その先陣に立って戦ってきたセビージャのデルニド会長は、現在の放映権契約が満了する2014-2015シーズン以降の分配方法を決めるリーグ総会にて、プレミアリーグをモデルとした新たな分配方法を提案。それは全放映権料の40%を全20クラブで均等分配し、残る60%の割り振りはリーグの成績に応じて決定するというものだったが、残念ながらこの案を支持したのはビジャレアル、アスレティック・ビルバオ、エスパニョールの3クラブのみだった。

 そして代わりに決議された分配方法は、バルセロナとレアル・マドリーに34%、バレンシアとアトレティコ・マドリーに11%、その他1部の16チームに45%、そして2部の全22クラブに9%が振り分けられるというもの。それは放映権の一括管理を避けたいバルサとマドリーがチラつかせた目先の小金に対し、2強に次ぐ高分配を得ているバレンシア、アトレティコをはじめとした安定志向のクラブが食いついた結果だった。

 この結果を受けた直後、ビジャレアルのジャネサ副会長は「成長を望むクラブがある一方、何かを失うことばかり恐れているクラブもある。僅かな期間で意見を翻したクラブすらあった」と他クラブの消極的な姿勢を嘆いた。

リーガ全体の放送権収入はフランスリーグとほぼ同額。

 放映権の「ばら売り」は、リーガの商品価値を100%生かせない要因にもなっている。

 2009-2010シーズンの各国リーグの放映権収入を比べると、プレミアはリーガの約2倍にあたる12億7000万ユーロ、イタリアのセリエAは1.5倍の9億1500万ユーロ、レベル的には劣るリーグアンですらほぼ同額の6億670万ユーロを得ている。ゆえに先述のガイ教授は訴える。

「誰かがリーガの放映権を一括で管理、販売しなければならない。リーガの放映権収入がリーグアンを下回るなんてあり得ない。ワールドカップとユーロ、そしてチャンピオンズリーグの王者である国のリーグの収入がプレミアリーグの半分に満たないなんてあってはならないことだ。もし放映権収入が6億ユーロから12億ユーロに増えれば、たとえバルサとマドリーに大半の額が渡ったとしても他クラブがより多くの利益を得られるはずだ」

【次ページ】 2強が財務強化される一方、経営難に陥るクラブが続出。

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