EURO2004 速報レポートBACK NUMBER

勝利をもぎとったフェリペの采配。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/06/25 00:00

勝利をもぎとったフェリペの采配。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 守る側と攻める側の一瞬のタイムラグ―――相手がシステムを変更してきたとき、守る側にとってはどれだけ早く新しいシステムに適応できるかが勝負になる。この適応のスピードにこそ、その国の戦術レベルが表れる。後半立ち上がりに失点が多いチームは、たいていこのスピードが遅い(たとえば日本代表……)。

 もちろんサッカー発祥国であるイングランドは、このスピードは恐ろしく速い。マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルといった名門で活躍する選手は、2、3分もあれば相手の出方を理解してしまうであろう。

 だからこそ、ポルトガルのフェリペ監督の交代はマジックだった。

 ポルトガル対イングランド、後半の半ばを過ぎた時点でイングランドが1点をリードしていた。フェリペ監督は勝負に出た。後半30分にキャプテンのフィーゴを下げて、FWのポスティガを入れて1トップから2トップに変更。さらにその3分後には右サイドバックのミゲルを下げて、MFのルイ・コスタを投入したのである。

 いったいどんな布陣にするのか? 立て続けのポジションチェンジが、イングランド守備陣に一瞬の迷いを生じさせた。ルイ・コスタ投入の5分後、左サイドのシモンが上げたクロスに、マークを外してフリーになったポスティガがヘディングで同点ゴール。フェリペ監督のわずかな時間差をつけての選手交代が、コンピューターのように正確な守備をしていたイングランドの4バックを欺いた瞬間だった。

 その後、両チームはシステムのバランスを崩しての攻め合いになった。延長にともに1点ずつを取り合った末のPK戦。最後はバッセルがPKを外し、ポルトガルが心理戦に競り勝ち、準決勝進出を決めた。

 フェリペの采配が当たり続けるのは、ただの偶然ではない。少しばかりの運と、恐るべき勝負勘と、そして緻密な計算の結果、ポルトガルを勝利に導いたのである。

 試合後は、ブラジル国旗を身にまとってピッチを走り回るフェリペ監督の姿があった。フィーゴやルイ・コスタらの黄金世代に、クリスチャン・ロナウドらの若手が加わり、ポルトガルの選手層は厚い。先発で力を発揮する選手もいれば、ジョーカーの役割をできる選手もいる。そこに2002年W杯優勝監督の頭脳が加わるのである。地元の人たちは、ポルトガルが優勝しなければもう満足しない。

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