EURO2004 速報レポートBACK NUMBER

アウフビーターゼーン、ドイチェランド…… 

text by

西部謙司

西部謙司Kenji Nishibe

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/06/24 00:00

アウフビーターゼーン、ドイチェランド……<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 すでにグループDの1位通過が決まっているチェコは、予想どおり2軍メンバーでドイツ戦に臨んだ。勝てば自力でグループリーグ突破が決まるドイツは、フリードリヒ、ノボトニー、ベアンスの3バック。両サイドにフリンクスとラウム、ボランチにはハマンと何とシュバインシュタイガー。前線はクラニーのワントップの下にシュナイダーとバラックの2シャドー。攻撃的な布陣で必勝を期した。

 21分、ドイツが先制。チェコ陣内右サイドでプラシルのドリブルをカット、左に出たシュナイダーは中をよく見てフリーのシュバインシュタイガーに低いクロスを渡し、シュバインシュタイガーはそれをワンタッチで横のバラックへ。小さくバウンドした難しいボールだったが、バラックは左足のアウトでスライスさせてゴール左上スミへ豪快に叩き込んだ。チェコの失点はプラシルの自陣でのドリブル。それ以前にも、プラシルは何度かドリブル突破を試みてボールを失っていたが、このあたりはレギュラー獲得へアピールしたいという思いが裏目に出たようだ。

 ところが、今度はその“いいところを見せたい”という意欲がチェコのゴールをもたらす。オランダ戦でも交代出場して活躍したハインツのドリブルがファウルを誘い、FKを自ら決めて同点とした。左利きのハインツは中村俊輔風のテクニシャンで左足の中距離パスの精度が高く、キープ力もある。FKはきれいなカーブで右上スミに収まっていった。

 後半、ドイツはフリンクスに代えてポドルスキを投入。3−5−2に変え、右のシュナイダーと左のラウムのサイド攻撃を狙う。ドイツは左右の崩しから再三チャンスを作ったが、あと一歩でゴールが奪えない。バラックのシュートがポストに当たり、CKからの至近距離の連続シュートはDFとGKにぶつけてしまう。ドイツがハイクロスの雨を降らせはじめたとき、ふいにチェコの2点目が決まった。

 負傷したロクベンツに代わって出場したバロシュが、77分にたった1人で得点した。ドイツのマークが甘くなっていたスキをついて、バロシュはセンターバック2人の間でパスを受けた。そこからは一気に加速してノボトニーとベアンスを手玉にとり、シュートはいったんGkカーンに弾かれたが、そのままこぼれ球を押し込んだ。

 終盤、ドイツはいつものごとく放り込みを繰り返したが、チェコ守備陣に跳ね返されタイムアップ。ラトビアを3−0で下したオランダのベスト8進出、ドイツのグループリーグ敗退が決まった。チェコのファンはアウフビーターゼーン(さようなら)の大合唱。オランダ戦で強さを見せたドイツも、ラトビアに引かれると崩せず、チェコの2軍に対しても2点目がとれなかった。不運な面もあったがテクニックが足りず、バラック以外に攻めに変化をつけられなかったのは痛い。3連勝のチェコは2軍中心のメンバーで持ちこたえ、相手が前がかりになったとこでバロシュ、ポボルスキを投入して勝ってしまった。それほど無理をしたつもりもなかっただろうが、この日もブリュックナー監督の采配はしたたかであった。

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