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プレミアに流れ始めたスペイン人。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/01/11 00:00

プレミアに流れ始めたスペイン人。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 IFFHSなる歴史連盟のフットボール統計によると、昨年、世界で一番優れていたフットボール・リーグはスペイン・リーグだという。FIFAのワールド・ランキングではユーロ2004での不振により3位から5位に転落したスペイン代表であるけれども、リーグでは世界ナンバー・ワンだった。2位のプレミア・リーグ(イギリス)と5ポイント差の僅差だが、1189ポイントを獲得しての金賞受賞だ。セリエA(イタリア)とブラジル・リーグが3位で5位フランス、6位ドイツ、7位アルゼンチンという結果になっている。イランのアリ・ダエイがストライカー部門で受賞しているなど、なんとも微妙な統計なのだけれど。

 でも、リーグと代表でスペインのイメージがかけ離れているのは当たっているし、プレミア・リーグがスペイン・リーグを脅かす存在であるのも、的外れではない。

昨年は多くのスペイン人がイギリスに渡った。ざっと数えただけで20選手が国外のリーグで戦っているが、なかでもプレミアにはセスク、レジェス(アーセナル)、シャビ・アロンソ、ルイス・ガルシア、ヌニェス、ホセミ(リバプール)、イエロ、イバン・カンポ(ボルトン)、アルムニア(ポーツマス)、メンディエタ(ミドルスブラ)、リカルド(マンチェスター・U)と11選手が在籍する。

さらに、スペインからは冬の移籍マーケットが閉まるまでに何人かの選手がプレミアに行きそうな雰囲気でもある。ラウールやホアキンら代表クラスにもオファーは舞い込んだ。出場機会の少ない、いわば飼い殺しのモリエンテスに対しては8クラブが獲得しようと競っている。モナコをチャンピオンズ・リーグ決勝にまで導いたストライカーなら引く手あまただ。なかでも、リバプールとニューカッスルが頭ひとつ抜けているという。驚きは、リバプールがアイマールを獲得する話が浮上しただけでなく、アイマールがチャンスを与えてくれないラニエラに反旗を翻したことだ。「試合に出られないなら移籍したい。ベニーテス監督はよく知っているし、なぜ、出て行くことがダメなのか理解できない」と。

数年前までは、プレミアに限らずスペイン人が国外でプレーするのは、バルサを放出されたフェレール(チェルシー)やレアルで戦力外通告を受けたイバン・カンポらのような選手が、新天地を求めて出て行くケースがほとんどだった。スペイン人は、どんなに魅力的なオファーでも、スペイン語の通じない国には行きたがらなかった。プレミアの雰囲気に一度は触れてみたいという願望は抱いても、自分の家、家族が大好きだったから。それが近年、変化を遂げる。ベンゲルから3年越しのラブ・コールを受けたレジェスがアーセナルで活躍すると、蹴りこむだけ、スペイン人のスタイルは受け入れられないというプレミアのイメージが変わる。ベニーテスがリバプールで指揮を取るようになるとさらに身近なものとなった。

ベスト16が出揃ったチャンピオンズ・リーグだが、バルセロナ対チェルシー戦が2月に行われる。圧倒的な強さでスペイン・リーグ首位を走るバルサと史上初の4冠を狙うチェルシー。この勝敗によっては両国のリーグの価値が逆転するともいえる。外国人選手によってリーグの地位を上げてきたスペイン・リーグとプレミア・リーグであるけれども、これからはスペイン人がイギリスに流出するだろう。

 ブラジルやアルゼンチンの南米勢がスペインに入り、スペイン人はイギリスへ。だからといって、これがはっきりとした移籍の勢力図にはならないだろう。イギリス人とスペイン人の性格が合うわけもないし、雨ばかり降る太陽のない国にスペイン人が満足するわけもない。しかしながら、モウリーニョにベニーテスといったイベリア大陸の指揮官がプレミアに混ざったことで、勢力図に変化が起きたことだけは確かである。

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