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重要なのは2カ月半。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/01/26 00:00

重要なのは2カ月半。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 僕が密かに推すバレンシアが好調だ。スペインリーグでは目下6連勝を記録。順位は4位ながら、首位を行くバルセロナとのポイント差はわずか3。絶好のポジションに付けている。2月20日にチャンピオンズリーグの再開を控えたいま、ベスト16の中で最も上り調子のチームだと言える。

 グループリーグと決勝トーナメントの間の2ヶ月半を、それぞれのチームはどのように過ごしたか。決勝トーナメントの行方を占う上で、これは重要なカギになる。いま各国内リーグで、調子を上げているチームは確実に狙い目だ。

 バレンシアは一時期、野戦病院と言われるほど大量の怪我人を抱えていた。チャンピオンズリーグでは、グループリーグを首位で何とか乗り切ったものの、レベルの高いスペインリーグでは、さすがにボロ隠しはできなかった。連敗を重ね、順位を中位まで急降下させた。今季のバレンシアは終わった。スペインリーグはもとより、チャンピオンズリーグでもバレンシア株は下落した。

 3大ブックメーカーの一つであるウィリアムヒルは、現在その優勝予想オッズを、21倍に設定している。これは16チーム中9番目。12倍で8位のミランとの間には、大きな差がある。予想の世界基準と言っていいブックメーカーでさえ、この低評価だ。いまのミランとの間に、実際9倍もの力の差があるだろうか。しかし、ブックメーカーがそれでもバレンシアを低評価する理由は分かりやすい。決勝トーナメント1回戦の相手がインテル(5番人気タイ=11倍)であるからだ。

 インテルもまた好調だ。セリエAで13連勝を記録。2位以下に大差をつけて首位を独走中だ。調子はバレンシアと同じぐらい良い。つまりこの対決は、決勝トーナメント1回戦屈指の好カードといえるのだ。

 インテルとバレンシアが、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントで顔を合わせるのは、'02〜'03シーズン以来4年ぶりだ。この時は準々決勝で、インテルがバレンシアを下している。通算スコアは2−2。結果を分けたのは、アウェーゴールルールだった。しかし、それは数字上の話。バレンシアの敗因は、メスタージャで行われた第2戦で、守備の要、アジャラの信じられないミスにある。開始早々の最終ライン、フリーでボールを受けたにもかかわらず、トラップミス。後逸したところを、ビエリに痛恨のアウェーゴールを叩き込まれてしまった。バレンシアはそこから2点を奪い返したが、あと一歩及ばず。時の監督、ベニーテスは僕のインタビューにこう答えた。「負けた気がしない試合。運がなかったとしか言いようがない」と。実際、内容ではバレンシアが圧倒的に勝っていた。

 今季のインテルは、当時のインテルより強そうに見える。少なくともセリエAでは、豪華メンバーを抱えながら、チームとしての調和に欠けるいつものインテルらしさは見られない。

 だが、バレンシアも悪くない。というか、怪我人が大量に出なければ、今頃スペインリーグを独走していたはずである。レベルの高いスペインリーグをだ。そう考えると、やはりインテルの11倍より、バレンシアの21倍に食指は動く。僕的には。

 4.33倍対26倍。1位タイ対11位タイの対決も、そういう意味ではとても妙味のある対決に見える。バルセロナ対リバプールの一戦だ。リバプールの調子はいますこぶる良い。対するバルサはどん底だ。クラブW杯以降の強行スケジュールがたたり、すっかり調子を落としている。サッカーの相性でも、リバプールはやりにくい相手に見える。4−4−2のカチッとしたサッカーに、バルサは脆さを発揮するとは、僕の個人的見解だ。

 復帰間近が伝えられるエトーのプレー次第だろう。エトーが完調で、大活躍すれば文句なくバルサ。でなければ大接戦。リバプールにもチャンスはある。

 バルサと同率で首位に立つチェルシーは、ポルトと対戦する。グループリーグ終了時なら、この一戦はチェルシーで堅い鉄板レースに見えた。しかしチェルシーの調子は、悪くなるばかりだ。モウリーニョが監督になって以来、最悪の状態にある。ポルトの倍率は67倍。お尻から3番目だが、この試合に限っては、その差に40倍以上があるとは思えない。

 81倍というポルト以上の低評価を受けるセルティックについても、それは当てはまる。相手のミランは、言わずとしれた優勝候補の常連で、優勝倍率でも12倍を示すが、これも鉄板レースには見えてこない。ミランの調子の悪さだけが理由ではない。

 注目したいのは対戦順だ。まずセルティックパークで行われる。ウインターブレイク明けの初戦を、この地で戦うということは、ミランにとって嫌な話だろう。チャンピオンズリーグの決勝トーナメントを戦うクラブのホームスタジアムには、概してまともな空気が流れている。常連組のスタンドは言ってみれば洒脱だ。常識の範疇にある。そんな中にあってセルティックは例外だ。訪れたチームがいやーな気分になる独特の臭みに支配されている。20年前にタイムスリップしたような、高級感ゼロの田舎っぽい匂いだ。2ヶ月半ぶりの試合で、いきなりあの匂いを嗅げば、名門といえど、調子を狂わされる恐れがある。対戦順はミランにとって明らかに不利だ。

 ホームで3勝、アウェーで3敗というグループリーグの戦いを見れば明らかだ。ホーム戦にはめっぽう強い。と言うより、相手チームがこのアウェー戦に弱いと見るべきだと思うが、それはともかく、決勝トーナメントの場合は、同じ対戦が連続する。第1戦の影響は、第2戦にも反映される。ジュゼッペメアッツァで行われる第2戦で、ミランが絶対に勝たなければいけない状況に陥り、ガチガチに堅くなるような展開に持ち込めれば面白い。そこで中村俊輔が、決定的なキックを決めれば、なおさらだ。この試合はひょっとすればひょっとする。大番狂わせが起きる可能性30%。僕はそう見ている。

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