ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2006年 VSアメリカ 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2006/02/14 00:00

2006年 VSアメリカ<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 前半のツケは大きかった。

 2006年ワールドカップイヤーの最初の国際親善試合で、2月10日(日本時間11日)にサンフランシスコで日本はW杯出場国の米国と対戦し、後半反撃に出たが及ばず、3−2で敗れた。

 ケガでしばらくチームを離れていたFW久保を1トップ、MF小野をその下にMF小笠原と組ませて3−6−1の布陣で臨み、立ち上がりは悪くなかった。だがそれも束の間、日本は突然リズムを崩すと、後半早々3失点目まで一方的な展開になってしまった。

 「立ち上がりはよかったが、リズムが少し落ちてからは相手につけ入る隙を与えてしまった」と宮本は振り返った。

 その「隙」はどこから来たのか?

 1月末にチームとしての始動以来日が浅く、ゲームフィットネス、フィジカルフィットネス共にまだ本来のものではないためなのか。

 「日本にとっては今年最初の試合で、思うように体も動かず、全体にいい出来とは言えなかった」とジーコ監督もパフォーマンスの悪さは認めている。特に、反撃に出ようという後半早々に3点目を与えてしまったことを「これまでにない展開」と嘆いた。

 前半10分過ぎ頃から、リスタートやクリアボールが相手に渡り、速いペースでパスをつながれるようになると、日本は相手のプレーを後追いするばかりになった。人を捕まえることができず、全体にプレスが甘く、相手に簡単にボールを出させてしまう。相手は必ずシュートで終わるようになって行った。

 米国のプレスは速く、的確だった。特に日本のラインが下がり始めてからは高い位置で寄せてきた。日本がボールを持っても、次へのプレー判断が米国に比べて遅い。その一瞬の遅れの間に相手に寄せられ、結局苦し紛れのボールを出す形に追い込まれた。これでは、反撃の糸口はなかなかつかめない。システム以前の問題だろう。

 野球場に特設された滑りやすいピッチに苦しめられ、3失点目のDF中澤選手のように肝心なところで足をとられる場面もあった。だがそれは、後半出場した選手や相手のプレーを見れば、あまり言い訳にはならない。

 前半24分の1失点目は、FWトウェルマンにマーク2枚がつられてしまい、DFポープをゴール前でフリーにしてしまった。また、前半38分の2失点目は、パスを素早くつながれて崩され、上がってきたMFデンプシーに決められた。日本はまったく対応できない、米国の見事な攻撃だった。こういうやられ方も懸念材料だ。

 1月4日から始動したという米国は体の切れも動きもよく、スピードもあり、プレーの精度も高い。選手各人が自分の役割に忠実で、セットプレーはもちろん、チームとして非常にこなれている。現在世界ランク7位というのが頷ける。6月の本大会では決勝トーナメントで対戦する可能性があるが、手強い相手であることは間違いない。

 日本がボールをつなげられればいいサッカーができるのは、後半の反撃を見ればよくわかる。問題は、そうでない時にどうするか。

 この試合はシステムや選手の組合せなどをチェックする意図もあり、あえて指揮官が前半の間に動くことはなかったが、選手独自で立て直せるような落ち着きはほしい。

 宮本は、「内容も結果も出なかったが、この時期に試合ができたのはよかった。これからもレベルアップしないといけない。特にディフェンスの局面、強さはチーム全体として求めていきたい」と話した。

 負けは残念だが、この対戦で自分たちにないものを体感できたことは日本にとってはプラスに違いない。

 さらに、別な面での収穫もある。

 一つの試合で3つのシステム(後半から3−5−2、後半途中から4バック)を試すことが出来たことと、後半から登場したFW巻やFW佐藤寿人、後半途中出場のMF阿部とMF長谷部の力量が見られたことだ。特に、巻はクロスが上がってくる場面で必ず中にいた。クロスの出し手との合わせ方が以前に比べてよくなった印象を受けた。

 なによりも、彼ら若手の動きのよさとハングリーとも言える積極性、役割をよく理解したプレーは、今後のチーム編成にプラスであることは言うまでもない。

 「この時期に大切なのは結果より内容」とジーコ監督は言い、「選手起用も含めてどんな布陣がベストか見極めたい」と話した。

 次のフィンランド戦(2月18日、静岡)をはじめ、今月はアジアカップ予選のインド戦(22日、横浜)、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦(28日、ドルトムント)と対戦する。だが、それ以降はW杯メンバー決定までには3月30日のエクアドル戦(大分)と5月のキリンカップの2試合(対戦相手未定、国内)、チーム確定後は5月30日のドイツ戦(レバークーセン)と6月上旬の1試合(対戦相手未定、ドイツ)と実践の機会は限られる。

 課題消化と調整に1試合も無駄にはできない。

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