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ダービーはロナウド一色。 

text by

鈴井智彦

鈴井智彦Tomohiko Suzui

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photograph byTomohiko Suzui

posted2005/10/21 00:00

ダービーはロナウド一色。<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 ダービー。響きがいい。朝から雰囲気もいい。アトレティコ対レアルのマドリッド・ダービーが行われたビセンテ・カルデロンには午前中から赤と白のカラーを身にまとうファンでごった返していた。キック・オフは夜10時だというのに。

 アトレティコには7人のアルゼンチン人、レアルには8人のブラジル人がいる。ビアンキとルシェンブルゴの両監督から、選手にフィジコ、コーチまでを合わせると色合い的には南米ダービーにもなる。ロナウドの口からは「アルゼンチン人とウルグアイ人は、いつも敵を挑発してくる。ボールが反対サイドにあるときなどは、彼らは後ろから殴ってくるからね。挑発のスペシャリスト」と、文句のひとつも出てくる。レアルにはパブロ・ガルシアとディオゴというウルグアイ人もいるけど、そんなのはお構いなしだ。

 「ロナウドがなんといおうが、そんなに重要ではない。私の年齢になると口論する気にもならないしね」とはアトレティコのビアンキ監督。こんな感じで、1週間前ぐらいからスポーツ新聞やTVは、ダービーをあおってきた。

 スペインは内戦の社会的影響や民族色の強い地方の町々から成り立っている。バルサとレアルの対決は世界的に注目をあびる戦いであるけれども、バスク、ガリシア、アンダルシア、カタルーニャ、マドリッドとそれぞれの土地で行われるダービーも重要な試合である。ただ、近年ではレアルが巨大化していくのと反比例して、アトレティコは弱体化するばかりで、いまのアトレティコでマドリッド・ダービーに勝ったことのある選手はひとりもいない。

 しかし今年は違う。ビアンキを呼んでアルゼンチン色に染まったアトレティコなら、ケジュマンとトーレスの2トップなら、久々にレアルに一泡ふかすことができるのではないだろうかと期待されていた。

 アトレティコのダービー対戦成績は60勝117敗52分。

 開始早々の7分、試合が動いた。ラウールがアントニオ・ロペスに削られて、ペナルティを得る。ロナウドがきっちりゴールを決めたのはいいとしても、アントニオ・ロペスの一発退場にはビアンキも声を荒らげた。「あの判定はおかしい。ひとり少ない0対1からのスタートだなんて」と。主審からすると、抜ければゴールが決まってもおかしくはない状況にあったからこその「赤紙」だという。微妙。これで、アトレティコの勝利はほぼ消えた。ロナウドが再びネットを揺らすと、あれほど熱狂していたアトレティたちも静かになる。「グティィィ、オカマぁ」なんて合唱していたのも聞こえなくなると、罵声の矛先はレアルにやられっぱなしの身内にも向けられた。

 ロナウドは昔からアトレティコと相性がいい。バルセロナにいたころからカモにしていた。過去2シーズンでも、ビセンテ・カルデロンでのダービーでは2試合とも2ゴールをあげている。今回も2ゴールを決め、ペレアのオウンゴールもほとんどロナウドの手柄だった。しかし、約1カ月の戦線離脱というありがたくないオマケがついてしまった。ペレアは3点目を決めただけでなく、同時にロナウドの足もかっさらった。左足首を抱えて悶絶するロナウド。復帰は11月19日のクラシコ(対バルサ戦)頃になると診断された。

 バレンタイン・デーに結婚式をあげたと思えば、スピード離婚。バツ2。ゴールして、手足をばたつかせたゴキブリ・サンバをパフォーマンスすれば、ひんしゅく。怒る仲間たち。ブラジル代表の合宿で「ラウール、ロビーニョよりもアドリアーノが一番息の合うパートナーだ」なんていうから、周囲も困惑。そのどれもが、ロナウドだ。それでも、何をしようがゴールを決めれば許される。それが、フットボーラー。レアルが118勝目をあげた今回のダービーは、ロナウドに始まり、ロナウドに終わった。

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