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勝ち組は巨人と広島。負け組は?
セ・リーグのドラフト、○と×。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph bySPORTS NIPPON

posted2009/11/08 08:00

勝ち組は巨人と広島。負け組は?セ・リーグのドラフト、○と×。<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

Hondaの長野久義は'06年日本ハムの4巡目指名、'08年ロッテの2位指名を2度拒否。3度目の今季ドラフトで巨人が単独1位指名し交渉権を獲得した。

 巨人がいい指名をした。2006年以来、坂本勇人('06年高校生D1巡)、藤村大介('07年高校生D1巡)、大田泰示('08年1位)、長野久義('09年1位)と、4年連続で野手を1位(巡)指名しているのだ。守り重視の日本球界では「1位指名は投手」という考え方が定着している。しかし、巨人は「守りと攻めは半々」というバランス重視の指名に向かおうとしているように見える。1位長野(Honda・外野手)の指名には、過去2回他球団の指名を拒否している長野に対する義理だて以上に、旧弊な思想に反発する巨人の野心のようなものを感じてならない。ちなみに、1、2位(鬼屋敷正人・近大高専/捕手)の野手指名も今回、巨人だけが敢行している。

 指名の内容自体なら広島のほうがわずかに上回っていると思う。1位今村猛(清峰・投手)は将来のエース候補、2位堂林翔太(中京大中京・内野手)は将来の4番打者候補と狙いが明確。広島は一、二軍まで見ても右の長距離砲が栗原健太くらいしか見当たらないのが不満だった。左右のバランスとともに剛柔のバランスもチームには必要。機動力重視の広島が昨年の岩本貴裕('08年1位・外野手)に続き、今年も長距離砲を指名したのは吉兆だと思う。

横浜は左のスラッガー、中日は未来の左腕エースを補強。

 左の超高校級スラッガー、筒香嘉智(横浜・三塁手)を指名したのが横浜だ。村田修一、内川聖一、吉村裕基と、左打者全盛の日本球界には珍しく、右の強打者をずらりと揃えている。バランス的にも左の強打者は今の横浜には必要で、さらに村田の三塁守備がそろそろ厳しくなっていることを思えば筒香の指名は悪くない。ただ、2位以下で即戦力投手が2位加賀繁(住友金属鹿島)1人だけというのは壊滅的な投手陣を見れば、「これでいいのか」と思わないでもない。

 中日は両リーグ最多の8人を指名したこと、さらに1位岡田俊哉(智弁和歌山)、2位小川龍也(千葉英和)と上位で高校生左腕を指名しているのが意味深である。チーム内には岩瀬仁紀、チェン、川井雄太、小笠原孝、山本昌、高橋聡文、小林正人などリーグ屈指の左腕が揃っているが、来季20代は外国人のチェンとショートリリーフの高橋の2人だけ。先発タイプの18歳左腕を上位で指名して将来に備えるというやり方は過去から繰り返されてきた中日の十八番。3位以下の指名は残っている野手をいい順に指名したような荒っぽさがあるが、ドラフト巧者の片鱗は十分うかがわせた。

阪神はドラフト獲得選手をしっかり育成すべき。

 ヤクルトは中日、阪神、日本ハム、楽天、西武とともに菊池を1位で入札したが抽選で外れ、社会人左腕の中澤雅人(トヨタ自動車)を1位指名した。今季終盤の投手不足を思えば先発投手の補強は急務だが、中澤、2位山本哲哉(三菱重工神戸)ともリリーフタイプに思えて仕方ない。この上位指名より3位荒木貴裕(近大・遊撃手)、4位平井諒(帝京五・投手)のほうが個人的には魅力を感じる。

 阪神は現場(監督、コーチ)に配慮したドラフトになった。ほとんど毎回そういう指名なので個性と言っていいかもしれないが、チーム強化の根幹はドラフトではなくFA選手の獲得というのはどういうことなのだろう。数年前までの巨人には「一軍の選手がファームから育っていくケースが少ないので、物語をファンが共有できない」と書いたが、今はその言葉を阪神にそっくり捧げたい。

 1位二神一人(法大)、4位秋山拓巳(西条)はそれぞれ大学、高校球界を代表する右腕で期待値も高い。抜擢したいという気持ちを首脳陣に起こさせるためにも、キャンプに照準を合わせた体作りを行うべきだろう。

堂林翔太
岡田俊哉
今村猛
筒香嘉智
長野久義

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