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メジャー選手の“ドレスコード” 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/07/20 00:00

メジャー選手の“ドレスコード”<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 取材に追われる日々にあって、自分の中で日課にしていることがある。日本人メジャー選手たちが手がけている公式サイトやブログをチェックすることだ。自分の場合、特定の選手だけでなく、何人かの選手を入れ替わりで回っているため、事前情報として重宝させてもらっている。

 なかでも、田口壮選手の日記は忙しいにもかかわらずほぼ毎日更新され、内容もチーム内の面白エピソードがふんだんに盛り込まれていて、いつも楽しく読ませてもらっている。先日も、某新人選手がメジャー球界の“暗黙のルール”を守らずスニーカーで球場入りし、先輩選手に服を冷凍庫で凍らされてしまったエピソードを紹介していた。長年メジャーを取材してきて、確かに選手の服装に関するルールはかなり厳格であると言わざるを得ない。日本の中高生ではないが、遠征中の選手たちの服装はきちんと揃っていて面白い。そこで今回は、インサイド・ストーリーとしてメジャー選手たちのファッション事情を紹介したいと思う。

 ただ、服装に関するルールは、ほぼ遠征中に限られている。遠征中はスーツ着用が義務づけられていることを知っている方も少なくないと思うが、これもあくまで飛行機等で移動する日のみのことで、敵地でも普段の球場入りは、もっとカジュアルで構わない。

 チームによって多少異なると思うが、最も典型的なスタイルが、革靴、デニム、綿100%系のカジュアル・シャツ(長袖)。これがほぼ遠征中の選手たちの “三種の神器”といっても構わないだろう。さらに厳密にいうと、シャツの下にアンダーシャツを着ないパターンがほとんどで、試合後はデニムの下にパンツを履かない選手もいるのだ(理由まで確認したことはないので悪しからず)。

 ただ先日ジャイアンツの遠征についていった際は、夏場ということもあり、長袖シャツだけでなく半袖のポロシャツを着ている選手も少なくなかった。ここで厳密に守らなくてはいけないのが、「革靴」と「襟付き」ということだ。前述の田口選手が日記に書いている新人選手は、ここの部分で違反を犯したというわけだ。ただしボンズ選手のような超ベテラン選手ともなれば、完全な特別待遇だ。遠征中でも堂々とTシャツ姿で球場入りしていた。

 さらに移動日に着用するスーツに関しても、きちんとルールがある。もちろん革靴は必須アイテムだが、よりスーツ向きのフォーマルなものを履かなければならない。ただ最近はネクタイ着用については個人の意志に任せているようで、義務づけるチームは少なくなった。ジャイアンツを見る限り、ネクタイを締めていたのは選手ではジョー・クライン投手ぐらいだった。さらに夏場だったためか、ジャケットを着用していた選手も少なく、デーブ・ロバーツ選手他数名で、ほとんどの選手がYシャツにスラックス姿だった。ここでもボンズ選手は同じ生地でつくられたカスタムメードの上下(スラックスと長めにあしらったジャケットタイプのシャツ。NBAの黒人選手が似たようなファッションをしている)をきめ、異彩を放っていた。またライアン・クレスコ選手も、刺繍が入ったシャツとややラフなスラックスで上下を黒でまとめ、自分の“色”を出していた。やはりベテラン選手たちは、ファッションでも一線を画しているようだ。

 その一方で、ホーム球場での服装は完全に自由だ(もしかしてチームによっては異なるかも…)。昨年取材する機会が多かったドジャーズなど、若手選手の中にはTシャツ、短パン、ビーチサンダルと完全なサーファー・スタイルで球場入りしていて、ホーム試合こそ、ファッションに選手たちの個性が見え隠れする。

 例えばドジャーズの場合、デレック・ロー投手やノーマー・ガルシアパーラ選手らは比較的体育系で、普段はTシャツ、ジャージー、スニーカーが多い。その一方、若手選手たちは、お洒落に敏感だ。ラッセル・マーティン捕手やアンドレ・イシアー選手など、結構ビンテージものを揃えて決めているが、基本はTシャツ、デニム、ビーチサンダルだ。斎藤隆投手も普段着には気を遣うタイプ。自分のブログにも書いていたが、ロサンゼルスのビンテージ系ショップに出掛けては物色しているという。

 最後に1つだけ、ラッセル捕手らドジャーズの若手選手が昨年から愛用しているブランドを紹介しておこう。その名は『Ed Hardy』。なかなかにド派手なデザインが特徴的だ。最近ではボンズ選手もホーム球場でたびたび着用しているのを目撃している。

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