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サッカー界最強弁護士は
モウリーニョを守れるか。
~J・L・デュポンvs.UEFAの行方~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byReuters/AFLO

posted2011/06/28 06:00

1995年12月15日、欧州サッカーを変えた判決後に笑顔を見せる若きデュポン(左)とボスマン

1995年12月15日、欧州サッカーを変えた判決後に笑顔を見せる若きデュポン(左)とボスマン

 ジャン・ルイ・デュポンというひとりのベルギー人弁護士がいる。

 サッカー界で最も有能な弁護士と言われる彼は、'95年のボスマン判決でサッカーの移籍規則を根本から変えた人物だ。

 無名選手ジャン・マルク・ボスマンが、契約終了後にもかかわらず、他クラブへの移籍を規制されたとして起こした裁判。デュポンはEU法に抵触するとしてUEFA相手に勝訴、契約切れの選手の移籍は自由とする現在の規則を生み出した。

 その後、デュポンは欧州ビッグクラブの連合体G14の代表弁護士も務め、国際大会で選手が負傷した際には、FIFAからの補償金を所属クラブに充てる新規則を設けるなど、サッカー界に変革をもたらしてきた。

 そんな敏腕弁護士がこのほど、ジョゼ・モウリーニョの弁護をすることになり、注目を浴びている。昨季、バルサとのCL準決勝第1戦で退席処分となり、UEFAに5試合のベンチ入り禁止と5万ユーロの罰金を言い渡されたモウリーニョ。過激な発言を重ねる「問題児」を厳罰に処したいUEFAだったが、その前に再び立ちはだかるのがデュポンだ。

成功の要因はスポーツへの特化と堪能な語学力。

 表現の自由と発言に対するUEFA規則の不備を押し出すデュポン。過激発言に対して5試合+5万ユーロという処分は妥当なのか。今後のUEFA裁定のひとつの基準となりうるだけに、他クラブも行方を見守る状況になっている。

 ボスマン事件の頃は無名の弁護士だったが、現在では「問題が起きればまずデュポンを」とも言われるように、各方面で引っ張りだこだ。成功の最大の要因は案件をスポーツに特化したこと、そして複数の国で仕事ができる幅の広さだろう。

 '88年にリエージュ大学を卒業後、翌年にはEU法のマスターを取得。その間に母国語のフランス語以外に英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語を学び、欧州の主要リーグをカバーできる語学力を身につけた。今では欧州中のクラブや選手をはじめ、代理人、リーグ、スポンサーなど、顧客は後を絶たない。

 最近、イタリアでは賭博問題で元選手のジュゼッペ・シニョーリが嫌疑をかけられるなど、サッカー界には法に関わる問題も多い。ピッチ外の問題をスムーズに片付けるデュポンのような優れた弁護士のニーズは今後も増えていくはずだ。

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