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W杯グループに恵まれたイングランド。
2018年のW杯招致には大苦戦中。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2009/12/14 10:30

W杯グループに恵まれたイングランド。2018年のW杯招致には大苦戦中。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

南アフリカのケープタウンで行われた抽選会に、イングランドからはベッカムが“参戦”。今後、2018年W杯招致への切り札となるか?

 夢のような“ドリーム・グループ”。希望に満ちた“グループ・オブ・ホープ”。

 巷で聞かれる表現は様々だが、12月4日(現地時間)に南アフリカで行われた2010年W杯の組分け抽選で、イングランドが強運だったことは間違いない。

 同日の夜、テレビのニュース番組では、抽選会の中継をパブで見守る国民の様子が紹介されたが、Cグループの顔ぶれが決定した瞬間の店内は、まるでW杯優勝が決まったかのような大騒ぎだった。

 翌朝には、煽り系タブロイド紙の代表格『サン』紙が、同グループ4カ国の頭文字を取った「E(イングランド)・A(アルジェリア)・S(スロベニア)・Y(ヤンキー=米国)」の見出しを第1面に掲載し、世間の「楽勝(EASY)ムード」に拍車を掛けた。同紙にコラムを持つジョン・テリーは「俺たちは(W杯優勝で)歴史を作れる」と断言。代表キャプテンの勇ましい一言に、早くもイングランド国民は酔った。

“EASY”なCグループ決定がW杯招致を巡る内紛劇を隠蔽。

 もちろん、常に沈着冷静なファビオ・カペッロ監督は、「油断は禁物だ」との慎重なコメントを出して、周囲のお祭り騒ぎとは一線を画している。しかし、カペッロの雇い主であるFA(イングランドサッカー協会)の面々は、イタリア人指揮官の見ていない所で小躍りしたい心境だろう。来夏への盛り上がりのおかげで、9年後に関する自らの失態まで陰に隠れることになったのだから。

 抽選前のイングランドでは、2018年W杯が2010年W杯と同レベルで話題になっていた。

 イングランドは9年後の大会開催国に立候補している。しかし、FAのデイビッド・トライズマン会長を委員長とする招致委員会は、これまで言わば「自殺点」を繰り返してきた。10月にFIFA(国際連盟)の会合がロンドンで行われた際、招致ライバルのオーストラリアに宣伝活動で出し抜かれたイングランドは、ジャック・ウォーナーFIFA副会長から「手緩く真剣さに欠ける」と取り組み姿勢を酷評された。

 開催国決定権を持つウォーナーら24名の夫人たちにブランド(マルベリー)物のバッグを用意すれば、贈賄行為だとライバル勢の非難を浴び、要人たちの顰蹙も買った。

 そして、11月24日にはデイブ・リチャーズの招致委員会脱退という騒動が勃発した。

 プレミアリーグ会長として国内外で影響力を持つリチャーズは、同委員会役員の中でもキーパーソンと目されていた。それが、「委員会を離れて支援する方が得策」との不可解な発言を残しての突然の辞任。母国へのW杯招致に、世界最高レベルの人気を誇る国内リーグの長が「関わりたくない」と言っているのも同然なのだから、実にお粗末な内紛だ。

【次ページ】 「自滅寸前」の招致運動の切り札は、デイビッド・ベッカム。

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