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浅田、鈴木らが五輪代表へ。
全日本選手権、その舞台裏を見る。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/12/29 10:30

浅田、鈴木らが五輪代表へ。全日本選手権、その舞台裏を見る。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 激戦だった。

 2009年12月27日、バンクーバー五輪代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケートの全日本選手権が終了した。

 グランプリ・ファイナルの結果で内定していた男子の織田信成、女子の安藤美姫に続く、男女それぞれ残り2枠に滑り込むのは誰か。

 特に有力選手がひしめく女子は、熾烈な戦いが予想された。そして目の前で展開したのは、想像していた以上の厳しい戦いであった。

 今大会、まず注目されたのは、浅田真央だった。トリプルアクセルの不調からリズムを崩した今シーズン。グランプリ・ファイナル進出を逃し、約2カ月ぶりの実戦が代表選考会の場である。その期間で立て直すことは出来たのかが大会の焦点の一つだった。

 結果は、上々の出来。

 今シーズン、初めて笑顔で終わることのできた演技となった。

ついにトリプルアクセル成功。浅田真央が会心の演技で優勝。

 ショートの冒頭のトリプルアクセルこそ回転不足を取られたが、その他は今シーズンでは最高の出来で首位。迎えたフリーでは、トリプルアクセルをついに成功させる。その勢いに乗り、伸びやかな演技を見せる。

 構成を変えたことも功を奏した。

 フリーではストレートラインステップを1秒ほど短くし、スパイラルの順序やコースも変え、ジャンプへの助走距離を長くした。これまでの難易度の高い構成から、やりやすい形に修正したのだ。そして優勝。「全日本優勝者は内定」の規定にのっとり、バンクーバー五輪代表をつかんだ浅田は、笑顔で語った。

「全日本まで、充実していました。よく修正できたと思います」 

 続く女子の3人目は、鈴木明子と中野友加里の争いに絞られた。

 ショートで4位になった鈴木は、フリーは最後から2番目の滑走順。中野、浅田の演技は終わっていたが、「点数は知りませんでした」。

 ひたすら自分の演技に集中して臨んだ鈴木は、前半の3回転ループで転倒する。そこからが真骨頂だった。

「曲を大切に、と言い聞かせました」

 動揺することなく気持ちを切り替えると、最後まで『ウエスト・サイド・ストーリー』を演じ切った。

 結果は、中野をわずか0.17上回っての2位。得点が出た瞬間、目から涙があふれ出た。

鈴木も中野も上出来だったが演技の“立て直し方”に差が。

 一方の中野も、今シーズンの中では一番の出来を見せていた。

 思えば、不運に泣いたシーズンだった。グランプリシリーズの初戦、フランス大会を前に左肩を脱臼。調整にも影響が出て好成績を残せず、過去3回出場していたグランプリ・ファイナルにも出場できずに終わった。それでも浅田同様、練習を重ね、全日本選手権で五輪代表をぎりぎりまで争うレベルの演技を見せたのは、オリンピック出場への執念なのだったろう。ショートでは浅田に僅差に迫る2位に入り、フリーも決して出来は悪くなかった。だが、冒頭に予定していた3連続ジャンプが着地でうまく行かず単発に終わり、そこからの立て直し方という一点において、鈴木と紙一重の差が出てしまったのかもしれない。

<次ページに続く>

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