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上位陣を苦しめたプレミアの「名悪役」、エバートンとケーヒルに注目する。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byPhil Cole/Getty Images Sport

posted2009/05/05 06:00

上位陣を苦しめたプレミアの「名悪役」、エバートンとケーヒルに注目する。<Number Web> photograph by Phil Cole/Getty Images Sport

 勝つのはマンUか、はたまたリバプールか。プレミアシップのタイトルレースも大詰めにさしかかっているが、4月26日には毎年恒例の「個人タイトル」が発表になった。PFA(選手協会)が選ぶ、年間最優秀選手賞である。今回、トロフィーを手にしたのはマンUのライアン・ギグス。今シーズンのプレミアでは、ずば抜けた候補がいないということで、引退間近とされるベテランに、ややセンチメンタルな票が集まったようだ。

 だが筆者に投票権があったならば、エバートンのMF、ティム・ケーヒル(オーストラリア代表)を選んでいただろう。身長は178cmだが空中戦に滅法強く、ここぞという場面でゴールを奪う「必殺仕事人」。今シーズンは8得点を挙げているが、そのうち5点はチームの勝ち点に直結している。W杯ドイツ大会で日本も思い知らされたように、対戦チームの監督や選手、そしてファンにとっては、ケーヒルほど「嫌な選手」はいない。

 ケーヒルのこのようなイメージは、エバートンというチーム自体のイメージにも重なる。近年、「リバプールの青いチーム」はカウンター主体の戦法で、世界的人気の“ビッグ4”(マンU、チェルシー、アーセナル、リバプール)を苦しめてきた。言わばプレミアの「ヒール」役だ。しかもエバートンは、昨今のプレミア勢には珍しく「外資」が入っていないため(会長は地元出身のビル・ケンライト氏)予算もきわめて少ない。当然、華のあるスター選手などはおらず、一般的な人気も高くなりようがない。

“庶民のクラブ”エバートンを支えるモイーズ監督。

 しかし裏を返せば、エバートンのような地味なクラブが、プレミアで「存在感」を示し続けてきたことは特筆に値する。特に今シーズンは主力の怪我に泣かされながら、つい最近までトップ4を狙える位置につけていたのだから、健闘は素直に讃えるべきだろう(4月30日時点で6位)。

 その最大の功労者は、監督就任8年目となるデイビッド・モイーズだ。彼は限られた予算の中で巧みに戦力を補強し、本人いわく「庶民のクラブ」をビッグクラブに対抗できる集団に仕立て上げてきた。

 モイーズは選手の力を引き出すのがとにかくうまい。ケーヒルはモイーズの下で最も伸びた選手の一人だが、たとえばマンUでは単なる「便利屋」だったフィル・ネビルも、エバートンでチームの精神的支柱に成長している。FAカップ準決勝のマンU戦で、PK戦の勝利に貢献したGKのティム・ハワードも、マンUでは『守護神失格』の烙印を押された口だった。モイーズは「このままでは終われない」という彼らの意気込みを買うことで、チームをハングリー精神で満たしてきた。

<次ページに続く>

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