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上位陣を苦しめたプレミアの「名悪役」、エバートンとケーヒルに注目する。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byPhil Cole/Getty Images Sport

posted2009/05/05 06:00

上位陣を苦しめたプレミアの「名悪役」、エバートンとケーヒルに注目する。<Number Web> photograph by Phil Cole/Getty Images Sport

マンUのファーガソン監督が認める後継者。

 モイーズがやっているサッカーそのものも、決して消極的ではない。今シーズンはFWが駒不足だったため4-5-1を基本システムにしているが、ケーヒル、マルーアン・フェライーニ、スティーブン・ピナールといった中盤の選手は、いずれもゴールを狙う意識が非常に強い。純粋な守備要員は、彼らの背後を固めるネビルのみだ。マンUのアレックス・ファーガソン監督は、このスタイルを高く評価しており、46歳のモイーズを自身の後継者候補の一人に挙げている。つまり御大は、モイーズを攻撃サッカーの担い手として認めているのだ。

 4月12日にアウェーで行われたアストンビラ戦などは、チームの攻撃指向が如実に表れた一戦となった。この試合ではケーヒル、フェライーニ、ピナールの攻撃的MFが揃って得点をあげ、派手な打ち合い(3-3)を演じている。酷な判定でPKを奪われていなければ3-2で勝利し、4位のアーセナルにも一気にプレッシャーをかけていたはずだ。

 残念ながら、クラブ史上2度目となるCL出場権の獲得(プレミアで4位以内)という望みはほぼ絶たれてしまったが、エバートンには14年ぶりのFAカップ優勝という目標が残されている。復活の狼煙を上げたい古豪(エバートンは9度の国内リーグ優勝歴を誇る)にとっては、またとない機会だ。しかも今回は、リバプール(4回戦)とマンU(準決勝)という、大物2チームを破った末の決勝進出である。

今季2戦2分けで大一番のチェルシー戦を迎える。

 来る5月30日、エバートンがウェンブリーで対戦するのは我らがチェルシー。モイーズは、「終盤に大一番を迎えた経験がないから」と冗談交じりに報道陣をはぐらかすが、並々ならぬ意欲を燃やしていることは明らかだ。

 今シーズンのプレミアでの対戦成績は2戦2分け。どちらも0-0のスコアレスドローだった。星勘定の上では互角だが、「ロンドンの青いチーム」が「リバプールの青いチーム」を苦手としている証拠だとも受け取れる。今回もモイーズは、得意の4-5-1でチェルシーの足元を掬ってやろうと企んでいることだろう。そこで例の如くケイヒルが嫌な場面で嫌な場所に顔を出し、決勝点を奪うような展開にでもなれば……。筆者同様、プレミアの選手たちも「今年はケイヒルを最優秀選手に選んでおくべきだった」と思うに違いない。

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