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ナインに愛され3連勝。
西勇輝、笑顔の向こう側。
~オリックスを牽引する若武者~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/05/13 06:00

2度目の先発で初勝利を掴んだオリックスのユウちゃん。「二桁を目指します」と志は高い

2度目の先発で初勝利を掴んだオリックスのユウちゃん。「二桁を目指します」と志は高い

「そらあ、満点よ」

 滅多に人を誉めないオリックス岡田彰布監督が目を細めるのは、開幕3連勝を飾った西勇輝のピッチングだ(原稿校了した5月4日時点)。

 現役生活17年目のベテラン、北川博敏も、マウンド上で笑顔を絶やさない20歳の若武者をこう評する。

「憎めないヤツなんです。投げるのが楽しくて仕方がないという感じで、何とかしてやりたいと思わせるんですよ」

 三重県立菰野高校出身。'09年の入団当初から「1勝して初めてプロ」と、勝ち星への渇望を語っていた。それだけに、未勝利のまま臨んだ今年のキャンプには人一倍、意欲的に取組んだ。テーマは、外角低めのコントロールを身につけること。小林宏投手コーチも「今、どうなってますか、と、自分をキチンと知ろうとしていた」と感心していたものだ。

江夏豊や山田久志、東尾修ら過去の大投手との共通点も。

 そして迎えた開幕。金子千尋ら主力投手の出遅れもあって、チャンスは意外と早く回ってきた。初登板は4月17日の楽天戦。西の投球は冴え、7回を見事、1失点に抑える。打線も次の8回に4点を奪い、待望の初勝利をプレゼントした。

「一つ勝ったことでホッとしました。でも、余裕なんて全然」と控えめにその喜びを語ったが、返す刀で2試合目の西武戦(4月24日)も7回無失点の好投。リリーフ陣が2点差まで追い上げられるヒヤヒヤの展開ながら、2勝目を手にした。

「コーチから、『ベンチであまり感情を出すな』と怒られちゃいました」と頭を掻いたように、言葉は若々しく、妙な人懐っこさもある。ナインに可愛がられるのも当然だろう。5月1日の楽天戦では、10点も取ってもらって3勝目を挙げた。

 捕手の伊藤光は、西をこう絶賛する。

「手首を実に柔らかく使えるし、独特の“間”があるので、140km台でも速く感じるはず。テンポもいいし、頭もいい」

 加えて、江夏豊や山田久志、東尾修ら過去の大投手との共通点もある。それは犬好き。彼らには、愛犬に何かが起きたとき、不思議と転機が訪れたものだが、西の高校時代からの愛犬キララも、今年のキャンプ中に急死した。その報せに一晩中泣き明かしたという西は「自分の悪いところを全部背負って逝ってくれた」と考えることに。悲しみを幸運に変えようと、“幸”という文字をグラブに刺繍し、「西のユウキ」はマウンドに立つ。

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