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引退を決意したマローンの独り言。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2005/03/03 00:00

 カール・マローンには、フリースローの前に必ずぶつぶつと独り言をつぶやくという癖があった。「神に勝利を祈っている」と言う人もいたし、「実際はただ口を動かしているだけ」と主張する人もいた。しかし、これまで誰も真実を知らなかった。マローンは、そのことを聞かれるたびに「引退したら話す」と言っていた。

 その答えが2月13日に明らかになった。マローンが19年間のNBAキャリアに終止符を打つことを発表したのだ。

 最後まで優勝を追い求めていたマローンは、最終シーズンとなった昨季には、ついに古巣ユタ・ジャズを捨ててロサンゼルス・レイカーズに加わった。ところが、レイカーズは前評判通りにファイナルまで進んだものの、ピストンズ相手に、目の前で優勝を逃した。今季も優勝できるチームとの契約を考えていたのだが、2月、交渉のためにサンアントニオを訪れてみたことで、気持ちがはっきりした。

 「(帰途の)飛行機に乗ったとき、もう終わりだと思った」とマローンは言う。「どのチームでプレーしても、フィジカル面はともかく、メンタル面で100%を出す自信がなかった」

 偶然、同じ頃に引退を発表したベテランがもう一人いる。インディアナ・ペイサーズのレジー・ミラーだ。2月11日、試合後の記者会見で「そのときがやってきたと思う」と、引退を表明した。ペイサーズ一筋で18年。NBAファイナルまで進みながらも優勝に手が届かなかったのはマローンと同じだ。今シーズン末まで現役のミラーには、まだ優勝の可能性は残されているとは言うものの、11月の乱闘騒ぎの処分によって戦力が欠けているチームだけにかなり困難な道のりだ。

 優勝できるのは毎年1チームだけ。優勝の味を知らずに引退していく選手のほうが多いのだとわかってはいるが、優勝を追い求めてきた彼らが、トロフィーを抱くことなく引退を決意した思いを想像すると切なくなる。

 ところで、マローンがフリースローの前につぶやいていたのは何だったのだろうか。

 「メディアの文句を言っていたときもあるし、野次を飛ばすファンの悪口を言ったこともある。兄弟姉妹のことを話したときもあるし、どこに行きたいか喋っていたこともある」

 世の中には、知らないままのほうが浪漫があることもあるようだ。優勝とは違って。

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