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正しいレフェリングが本物の格闘家を育む。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byKoji Fuse

posted2008/05/15 00:00

正しいレフェリングが本物の格闘家を育む。<Number Web> photograph by Koji Fuse

 「1回ダウンを奪ったら10―8。なのに2回奪っても10―7なのはなぜ?」「一方の選手がリング下に転落したら、レフェリーはどうする?」。みんな把握しているようで把握していない質問が矢継ぎ早に浴びせられた。そのたびに出席した多くの日本人レフェリーは「う〜ん」。

 4月20日、東京で開催されたジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッション(JPMC)主催のルール・ジャッジ講習会は非常に有意義な会だった。簡単にJPMCを説明すると、選手やレフェリーのみならず、プロモーターにもライセンスを発行して日本国内におけるWBCムエタイルールによる健全なプロムエタイの発展を目指す中立組織だ。そのルールを見ればわかる通り、昨年から活動が活発になったWBCムエタイと太いパイプを持ち、今後は積極的に選手を海外に紹介・派遣する計画もある。

 そもそもムエタイはK―1やキックボクシングと似て非なる立ち技格闘技。ルールや判定基準も重なり合わない部分が少なくない。そこでJPMC認定のレフェリーをしっかり育成しようと、この日ムエタイの本場タイで過去に1000人以上のレフェリーやジャッジを育成したアネック・ホントンカム氏(65歳)が招かれ、のべ8時間以上に渡って講義や実技指導を行なった。冒頭の質問を投げかけたのもアネック氏だ。

 「2回めのダウンは1回めのダウンのダメージがあったうえでのダウンだから1ポイントの減点となります」「一方の選手がフロアに転落したら、20カウントを数えます。その時間内に戻ってこれなかったら、TKO負けとなります」

 よくムエタイは「判定ではパンチより、キックが重視される」といわれているが、アネック氏はそれを言下に否定した。

 「蹴りが高いポイントを得られるのではなく、基本的にはパンチのポイントも全て一緒。強い蹴りを与えた方がダメージを与えられるから、そういうふうに誤って認識されているだけです」

 実技指導の時間になると、アネック氏は選手との距離、ブレークのかけ方、ダウンカウントの数え方などを熱心に指導した。ルールを深く理解したら、わかることだってある。私も“アチャン(先生)アネック”と呼びたくなってしまった。

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