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F1に向けて加速する、「中嶋」のDNA。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

PROFILE

posted2006/12/21 00:00

 日本人として初めてF1レギュラーとなった中嶋悟の長男、中嶋一貴が、'07年度からトヨタエンジンを使用するF1ウイリアムズチームとこのほどテストドライバー契約を結んだ。今回はあくまでもテストドライバーとしての契約であり、これをもって'07年度のF1グランプリ公式戦に出場できるようになるわけではない。しかしトヨタの手厚い支援体制を考えると、F1デビューへ向けてきわめて近い位置に立ったことにはなる。

 中嶋一貴は、レーシングカートでレースを始め、トヨタの若手育成プログラムの入口であるフォーミュラ・トヨタ・レーシング・スクール(FTRS)に参加、才能を認められてフォーミュラ・トヨタ(FT)で四輪レースにデビュー、'03年にはシリーズチャンピオンとなって、トヨタの育成ドライバーとして'04年に全日本F3選手権に進出した。2年間の全日本F3選手権生活で、中嶋は結局シリーズチャンピオンにはなれなかったが、今年トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム(TDP)の一員として欧州へ渡り、ユーロF3選手権に挑戦、1勝を含むシリーズランキング7位という成績を残した。

 近年、我が国のレース界では「F1を目指すならば出来る限り早く海外へ」という風潮が強まっている。ドライビングテクニック以前に英会話能力を問うような極論すら聞くに及んであきれ果てるばかりだが、中嶋一貴の歩んだ道筋は、やみくもな海外信仰とは無縁に見える。実際、本人はこう言う。

 「日本でF3を2年戦ったことは無駄ではなかった。確かにヨーロッパで学んだこともあるが、日本で身につけた技術や経験が基盤にあってこそ、それを生かすことができた」

 そう言えばかつて父親である中嶋悟は、「若い選手をF1へ送り出すのは、日本国内で十分な支援体制が確立されてからにすべき」と言い続けた。欧州の文化の中でF1を戦う際に最も大事なことは何なのか、中嶋悟は身をもって知っていたということだろう。その長男の育ちぶりを父親はどう眺めているか。

 中嶋一貴は'07年、F1テストドライバーを務めつつF1直下の種目であるGP2シリーズに参戦、1年を過ごす。その戦績でF1レギュラーとしての資質が最終的に確認されるのは言うまでもない。

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