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野球の妙を垣間見る、今大会の“捕手力”。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2008/08/27 00:00

 前評判が高かった投手がこれほど期待に応えられなかった年は珍しい。鍵谷陽平(北海)、西勇輝(菰野)、小熊凌祐(近江)らは、なす術もなく初戦で敗退した。一方の勝ち上がり組にしても、田村圭(慶応)、土屋健二(横浜)、近田怜王(報徳学園)、伊波翔悟(浦添商)らの出来はかなり不満だった。

 投手の不調を尻目に、今大会は捕手の優秀さがクローズアップされた。土井翔平(智弁学園)、山城一樹(浦添商)を始め、飯田大祐(常総学院)、地引雄貴(木更津総合)、中村悠平(福井商)などだ。捕手の能力の指標とも言える二塁送球は1.8〜1.9秒台を記録し、投手のリードにも大人の匂いを感じさせた。

 智弁学園の阪口は左肩が早く開くので、右打者の内角を狙うと死球になりやすい、というフォーム上の問題がある。外角一辺倒の投球に終始した土井にその理由を聞くと「内角球は抜けるので要求できませんでした。僕はガンガン(内角に)行きたかったんですけどね」と笑った。

 また、2回戦で千葉経大付と壮絶な打ち合い、走り合いを演じた浦添商の山城は波状攻撃を受けた7回を振り返って「伊波の投球フォームのクセが見破られたとは思いません。(まっすぐ系の)内角球が狙われていたので、それからは外角主体でリードしました」と語った。

 こういうリードへの配慮は優秀な捕手なら当たり前のようにするが、さらに上のステップに行こうとする場合、それを的確な言葉で投手、監督に伝える術が必要になる。言葉を的確に伝えることで認識が生まれ、修正に要する時間が短縮されるからである。ここに名前を挙げた多くの捕手には『それ』があった。

 「野球に必要なのは国語力」と取材の折りに語ってくれた故・栽弘義(元沖縄水産監督)氏の言葉はまさに卓見だった。

 好捕手がいるところに覇権あり、と言われるのはプロも同じで、最近では古田敦也がいたヤクルト、伊東勤がいた西武がセ、パの上位に長く君臨した。城島健司(マリナーズ)を失ったソフトバンクの苦戦を見れば、いかに捕手がチームにとって欠くことのできない存在かわかる。

 野球は投手力、という格言が日本には存在し、その重要性がことさらクローズアップされるが、今大会を見れば「野球はバッテリー」と言ったほうが正確だ。

■関連コラム► 沖縄が春・夏連覇?優勝狙う浦添商の伊波。 (2008年8月7日)
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