SCORE CARDBACK NUMBER

充実していた九州場所。'06年が今から楽しみだ。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2005/12/22 00:00

 朝青龍と琴欧州。九州場所にそれぞれの記録を懸けて臨んだ2人が、未経験の重圧に打ち勝ち、見事な大輪の花を咲かせた。

 ライバル不在、一人横綱として2年にわたり大相撲の屋台骨を支え続けた朝青龍。孤高の横綱が、初めて土俵上で涙を見せた。14日目の結びの一番、大関・魁皇戦。地元福岡出身の魁皇を後押しする声援を敵に回しながらも、完璧な相撲で7連覇を達成。勝ち名乗りを受けようとした瞬間、朝青龍の顔がぐしゃぐしゃに歪んだ。重圧たるや、想像を絶するものだったに違いない。

 「今どこにいるかわからない、という気持ちでした。今まで誰もやっていない凄いこと。全然これまでと違う」

 朝青龍は千秋楽でも手を抜かず、千代大海を一蹴。年間最多勝の新記録は、84勝に達した。前日の泣き顔とは正反対の満面の笑みを湛えての表彰式。小泉純一郎首相からは「新記録、大記録。見事だ。おめでとう」と祝福された。表彰式の後、支度部屋に戻ると、一門の関取らによる異例の胴上げで3度も宙に舞った。表彰インタビューで「弱冠25歳なんで」と笑いを誘った朝青龍。土俵上では憎らしいほどの強さばかりが目立つが、この日の茶目っ気たっぷりの笑顔や仕草は25歳の若者そのものだった。威風堂々と喜びを表すには、未だ若すぎる朝青龍。無敵の横綱が垣間見せた一時の人間らしさに、私はほっとした。

 主役の座こそ譲ったものの、琴欧州も計り知れない強さを示した。13日目の朝青龍戦。立ち合いすぐに右差し、左上手を掴んでがっぷり四つの体勢。ここから強烈な引き付けで横綱の動きを封じ、会心の寄り倒し。10勝目を挙げ、この時点で史上最速の大関昇進を確実にした。奇しくもこの日は、師匠が定年を迎え、部屋を継承する兄弟子・琴ノ若が引退した日。僅か所要19場所で手にした大関切符は、佐渡ケ嶽親方には最高の恩返しとなったことだろう。館内を舞った無数の紫の座布団は、まるで琴欧州が師匠に捧げた紙吹雪のように見えた。

 朝青龍による朝青龍のための九州場所だったが、琴欧州の存在が来年の大相撲を必ず面白くしてくれる──そんな予感を抱かせつつ、平成17年の大相撲は幕を閉じた。

ページトップ