NumberEYESBACK NUMBER

降格ユーべを待つ、セリエBの過酷な戦い。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

PROFILE

posted2006/08/03 00:00

 2006年7月14日、ユベントスは死んだ。同日夜、伊サッカー協会内スポーツ裁判所が、審判不正操作並びに粉飾決算に関する容疑でユベントスに制裁処置を下した。複数の放送局が急遽、生中継特番を組むなど異常な社会的テンションの中、下された判決は過去2シーズンの優勝剥奪とセリエB降格(来季勝ち点30剥奪のペナルティ付き)、罰金8万ユーロ(約1200万円)という厳しいものだった。

 判決を不服としたユベントス弁護団は、即時控訴した。だが、事件発覚後、伊サッカー界完全浄化の任を負って就任したグイド・ロッシ新協会会長がこの判決について「正義は行われた」と断じたようにドラスティックな逆転判決の可能性は少ない。ユベントスは110年におよぶ栄光の歴史上、初めて2部へ転落する。

 この判決は、“夏のバーゲン”の始まりでもある。スキャンダル発覚後、公開上場しているユベントス株は大暴落し、総額で約1億8000万ユーロ(約262億円)が吹き飛んだとされ、クラブ財政も非常に厳しくなった。W杯で活躍した高額年俸のスター選手売却は、もはや避けられそうもない。

 前監督カペッロを招聘したレアル・マドリーがまず“選手狩り”に着手した。堅牢なディフェンス陣からCBカンナバーロ、SBザンブロッタ、MFエメルソンをまとめてひき抜く算段だ。「2部であれば残らない」と表明したDFテュラムは欧州王者バルセロナが狙う。GKブッフォン、MFビエラ、カモラネージ、FWトレゼゲ、イブラヒモビッチは、インテル、ACミラン、チェルシー、バルセロナ、アーセナルなどの標的となり“買い値”を見極められている最中だ。「Bに落ちても残る」と明言しているのはチームのシンボルであり、引退後のフロント入りが確実なデル・ピエーロのみ。既に昨季からモチベーション低下が囁かれていたMFネドベドはこのまま引退の可能性もある。

 ユベントスは処分発表翌日に新シーズンへのキャンプをスタートさせた。世界中の白眼視の中、新指揮官として再生への舵取りを託されたのは、'90年代にすべてのタイトルを獲り、ピッチ上の闘将と呼ばれたデシャン。優勝チームに許されるスクデットのワッペンが“剥ぎ取られた”新ユニフォームを持って語った。

 「誰が去り、誰が残るかはわからない。だがユベントスのシャツを着ることは誇りだ。私の選手は、勝つためにすべてをつぎ込み、戦う意志と根性を見せなければならない」

 2年前のCLでモナコを率い決勝にまで進出させた手腕は評価されるが、勝ち点マイナス30からのスタートという過酷なペナルティが重くのしかかる。セリエAに復帰するにはプレイオフに出場できる6位以内に入るのが条件だ。しかし、昨季6位が勝ち点66だったことから計算される勝ち点100前後は、42節のセリエBでは絶望的な数字だ。削り合いと過密日程で揉まれた“狼たち”に加え、同じく降格処分を受けた名門フィオレンティーナ、ラツィオとの戦いも待ち受ける。

 わずか2カ月前、誰がこんな惨劇的事態を想像できただろうか。タイトル剥奪。屈辱のB降格。そして選手の大量売却。ユベントス粛清の嵐の中で浮かび上がってきたのは、落ち目となった者を徹底的に喰らい尽くそうとするヨーロッパの弱肉強食の掟だった。欧州サッカー界は、また新たな群雄割拠の時代に突入する。

関連キーワード
ユベントス

ページトップ