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今年の選抜を象徴した
エースたちの決勝戦。
――新たな投手黄金時代到来! 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2009/04/29 07:00

今年の選抜を象徴したエースたちの決勝戦。――新たな投手黄金時代到来!<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 第81回全国選抜高校野球は大会前から注目を浴びた今村猛(清峰)と菊池雄星(花巻東)の両エースが、大会に入ってからもその存在感を大いに放ち、決勝戦で相まみえた。

 今大会は1点差試合の接戦が多く投手陣の活躍が目立ったが、その中で、この二人の存在は象徴的だった。彼らの決勝までの失点が今村は「1」、菊池が「2」。今村が1回戦から準決勝の報徳学園戦で失点するまで33イニング連続無失点だったのに対し、菊池は24イニング連続無失点で後を追った。加えて、清峰のある長崎県と花巻東のある岩手県は春夏の甲子園優勝未経験地区ということもあり、両県の命運を握る投手同士の対決だった。

 今村が右の剛腕なら、菊池は左の怪腕。MAX148キロのストレートがありながら、力をセーブして投げる今村のスタイルは手抜きのように映るが、そのスイッチのオン・オフを使い分ける巧さが彼の高校生離れしているところだ。語り口が滑らかではないが、実に器用な側面を持っている。対して、菊池は常に一生懸命。MAX152キロのストレートを軸に、語り口と同様、投球テンポがよく、リズムでチームを乗せて行く。まさに好対照な二人なのだ。

ふたりのエースが新しい時代を作る

 試合は清峰が7回に1点を先制。この最少得点を守りきり、1-0の僅差で雌雄が決した。試合終了の瞬間、押し殺していた感情を爆発させた今村をホームベース上から見やる菊池の光景は、長らく続くだろう彼らの対決の新たなスタートを予感させた。「もっと強いチームになって帰ってきたい」と話した今村に対し、菊池は「神様が日本一はまだ早いと言っていたんだと思う。日本一の投手になって帰ってくる」と誓っている。

 敗れたとはいえ、東北勢として選抜初優勝をもたらすかと期待された花巻東の戦いに、個人的には惹かれるものがあった。菊池ばかりに注目が集まるが、チームの強さは彼の存在だけによるものではない。特筆すべきは今大会中に見せた終盤での粘りで、野球の技術・戦術だけではない大きな力が根底にあると感心させられた。佐々木洋監督は大会中、こう話していた。

「野球の技術そのものが、人生に役立つわけではない。考える力とか取り組む姿勢とか、そういうものを、野球を通して学んでほしい」

 通常の試合前、チームには室内練習場での取材が義務付けられるが、そこで花巻東ナインの心配りに出会った。室内練習場は扉やネットが張り巡らされているが、ベンチ外メンバーが報道陣に気遣い、通りやすいよう支えてくれる。そんな気配りをするのは出場校では彼らだけだった。

今から夏が楽しみな才能溢れる投手たち

 東北勢の選抜初優勝は実現しなかったが、好投手の菊池を中心に、心配りができるチームで準優勝をとげた花巻東こそが、東北の野球界に大きなものをもたらすような気がしてならない。

 もっとも、今大会のハイライトは今村・菊池に代表されるように、投手陣の活躍ぶりだった。興南のエース・島袋洋奨は1回戦の富山商戦で19奪三振を記録。毎回の、全員から奪う力投だった。PL学園のエース中野隆之は2回戦の南陽工戦で9回までを無安打無得点。延長戦の末に敗れたが、大記録にあと一歩と迫った。今村との右腕対決に敗れた福知山成美の長岡宏介は、清峰打線をスクイズによる1点のみの4安打に封じた。いわば、今村・菊池による白熱した投手戦の決勝は今大会を象徴していたのである。

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