#733
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坂本勇人 「ネオGの肖像」 ~新生巨人、救世主の履歴書~

2009/07/28
 待望の超新星が現れた。シュアで勝負強いバッティング、華麗な守備とアグレッシブな走塁、そして笑顔が似合う清新なルックス――。
幾つもの天賦の才を併せ持つ弱冠20歳の生え抜き遊撃手は、いまや新生ジャイアンツの象徴的存在だ。
彼は一体いかなる道のりを歩み、ここまで辿りついたのか。多数の関係者の証言をもとに、若き冒険者の隠された素顔と、その運命的軌跡を活写する。

 細身の背番号6が打席に向かう。場内には昨年放映されたドラマ「ルーキーズ」の主題歌、GReeeeNの「キセキ」が鳴り響く。打席の坂本勇人がグリップをぐっと高く掲げる。音楽が鳴り止む。すると、ライトスタンドでは、自然発生的にアカペラの大合唱が沸きおこり、独特の期待感が充満する。

 東京ドームでそんな光景が見られるのは、清原和博の「とんぼ」以来のことである。

一本足打法の生みの親も認めた、坂本の才気。

 巨人に久しぶりに現れた生え抜きスターは、まだ、弱冠20歳。昨年、松井秀喜以来の10代開幕スタメンを勝ち取ると、故障した二岡から遊撃の定位置を奪い、プロ野球史上3人目となる高卒2年目での全試合先発出場を果たした。今季は春先から快調にヒットを積み重ね、首位打者争いを演じている。1番に定着してからも勢いは衰えず、イチローが3年目にマークした210安打も射程圏にある。また数字だけではなく、「ここ」という場面での勝負強い一打も際立っている。

「タイミングの取り方が抜群に上手いね」

 そう評するのは、王貞治に一本足打法を伝授した打撃の師、荒川博である。

「打撃の真髄は間なんです。相手に合わせているうちはヘボ。自分の間に相手を引き込めれば、自由自在になれる。坂本は天性ですよ。前捌きも上手い。飛ぶポイントで打っている。体が細いから飛ばないわけじゃない。飛ばすのは技です。20歳の打撃じゃないね」

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 入団当初の王は、タイミングの取り方が下手だったから思い切って足を上げ、血の滲むような努力で磨き上げた。その打撃の真髄を、坂本はすでに会得しているという……。

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photograph by Naoya Sanuki

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