試合を観ていて、1ラウンド3分がこれほど長く感じることは滅多にない。WBC世界フライ級タイトル戦の初回──。
青コーナーから勢いよく飛び出した内藤は、タイの王者ポンサクレックに果敢に打ち合いを挑んでいく。右も決まるが、逆にサウスポーのチャンピオンが迎え撃つ左ストレート、右フックが内藤の顔面を捕らえる。「危ない!」内藤が被弾するごとに、応援の女性から悲鳴が上がる。
3年前、タイで行われた世界フライ級タイトル戦。一世一代の晴れ舞台の初回、内藤は王者ポンサクレックの強打に沈められた。この時のKOタイム「34秒」は百年の伝統を誇るフライ級世界選手権史の最短レコードとして残されている。勝者としてならともかく、敗者として名を残すことがどれほどの屈辱か。「今もトラウマになっている」と内藤は言う。この2年後、今度は勝者として日本タイトル戦の最短記録(24秒のKO勝ち)を樹立しても、それは変わらない。
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