2016年のルヴァンカップ制覇時、“ドリブル小僧”は隠れるようにPK戦に臨む仲間たちを見つめていた。あれから7年。プレーも心も変わった28歳が語る、頂点への責任と覚悟とは。
YBCルヴァンカップの決勝進出を告げる長い笛が埼玉スタジアムに鳴り響くと、浦和レッズの関根貴大は逆転勝利の喜びを噛み締めながら、ピッチの上でほっと安堵していた。
「不安だらけでしたからね。(試合前に)久しぶりに緊張しましたよ」
1点ビハインドで迎えた準決勝の第2戦。不動の右サイドバックとしてプレーしてきた酒井宏樹が、第1戦の退場処分を受けて出場停止。不測の事態が起きるなか、試合前日の練習で本職のサイドハーフから1列下がった位置へ移動した。
今季、AFCチャンピオンズリーグ武漢三鎮戦の後半から1度だけプレーしており、マチェイ・スコルジャ監督から「できるだろ」と確認されたという。そこで初めて、穴の空いた場所での先発起用を伝えられた。相手はリーグ屈指と言っていい強力なウイングを擁する横浜F・マリノス。当然、守備のタスクも求められる。攻撃力を最大の売りとするサイドアタッカーは「ここで俺を使うのか」と驚きつつも、すぐに腹をくくった。
「他にもオプションはあったはずなのに、僕が選ばれたので。『自分色』を出せれば、いいなと思っていました」
「将来、右サイドバックでプレーしているんじゃない?」
大一番での働きは、不慣れなポジションとは思えないほどの出色の出来だった。対峙するエウベルは「怖かった」と言いながらも、粘り強く対応。後半途中から投入された快足の宮市亮にも仕事をさせなかった。ビルドアップではすっと中央に入ってパスを受け、攻撃の組み立てに参加。タイミング良くオーバーラップも仕掛け、攻撃にアクセントを付けた。
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photograph by Asami Enomoto