クラブの歴史を変えるために――。誰よりも福岡のタイトル獲得を願い、名門クラブからのオファーも断った。長谷部サッカーを具現化するエースが頂点への大いなる野心を語った。
甘いマスクにトレードマークのヘアバンド姿は一見、優男風。だが、根っこに熱いものをたぎらせる。
「何としてもユニフォームに星をつけたいんです。僕たちには、それだけの力があると思っているので」
攻撃陣の要となる山岸祐也はルヴァンカップ制覇の野心を隠さない。決勝に駒を進めたアビスパ福岡はいまだタイトルと無縁。だが、ここ数年、クラブの歴史を次々と塗り替えてきた。
「うちのチームは団結力がすごい。攻守にわたって、常にチームとして戦っている。だから、いい試合ができるんです。それは見ている人たちにも伝わっているんじゃないかな。僕らの強みですね」
今季の歩みを振り返ると、決して順風満帆だったわけではない。リーグ戦では負けが重なり、長く勝利から遠ざかった時期もある。それでもチーム全員が下を向かず、常に事態を好転させようとする雰囲気に満ちていた。練習はもとより、ロッカールームでもそうだった。指揮官の力に拠るところが大きいという。
「福岡に来て4シーズン目ですが、シゲさん(長谷部茂利監督)の悪口や陰口を聞いたことがただの一度もないんです。それくらい尊敬されているということ。クラブの歴史を塗り替える力も、そこから来ているんじゃないかと」
ガンバからのオファーに「おめでとう」と笑顔の指揮官。
山岸自身、深い尊敬の念を抱いているという。そもそも指揮官が長谷部でなければ、別のクラブへ移籍していたかもしれない。ガンバ大阪からオファーが届いた昨夏のことだ。監督室に呼ばれた時の出来事を鮮明に覚えているという。
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photograph by Asami Enomoto