同じ年に同じ牧場で生まれた2頭の馬がいる。人々の心を震わせ、様々な想像をかきたてる稀有な能力を、天から授かった馬たちだ。彼らは昨春のクラシックで2回激突。レースレコードが記録されたダービーでは熾烈な一騎打ちを演じた。
クビ差の激闘に競り勝ち、第89代ダービー馬の称号を手にしたドウデュースはその後、挫折を味わい、アクシデントにも見舞われた。しかしその間には“さすがはダービー馬”と周囲を唸らせる走りを披露。金看板の輝きはちっとも色褪せておらず、さらなる飛躍に期待が膨らんでいる。
一方の雄イクイノックスにとっては今のところ、クビ差で戴冠を逃したダービーがキャリアに刻まれた最後の黒星となっている。引き立て役に甘んじた春に対し、秋以降は主役として連勝街道を驀進。傍目に映るほど順風満帆な歩みだったわけではないが、昨年は“1年の顔”に選ばれ、今年の春には“世界ナンバーワン”の評価も得た。
そしてこの秋、2頭は再び火花を散らす。かたや、いっそうの進化が窺えるダービー馬、こなた、GI4連勝中の世界ナンバーワン・ホース。春のクラシックで覇を競った同期のライバルが、こんなシチュエーションでダービー以来の再戦を迎えるのだから盛り上がらないはずはない。熱い視線が注がれる大一番を前に、異なる道を歩んできた両雄の軌跡が再び交わるまでの“518日”を辿り直してみたい。
本調子ではなかった凱旋門賞からの我慢の時を経て。
武豊騎手にとっては6度目、友道康夫調教師にとっては3度目の制覇となったダービーの後、ドウデュースの照準は凱旋門賞に定められた。大きな期待を背負って挑んだフランス遠征はしかし、前哨戦のニエル賞が4着、本番は19着と苦い結果に終わる。このうち凱旋門賞は発走の直前に降ってきた大雨により、馬場状態が極度に悪化。特殊な道悪に馬が戸惑い、力を出せなかった格好だが、友道調教師は渡仏後の状態にも微妙な違和感を覚えていたと明かす。
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