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<フットボール紀行>56歳・三浦知良の「大いなる旅」はポルトガル後も続く〜もうひとりの“カズ”との邂逅も〜

2023/06/26
「これ、もらってください」と豊福晋さんがカズから渡された写真
遠く日本から突然やってきた56歳のサッカー選手は、ポルトガルの小さな町でも、ひたむきにプレーし続けた。異国でボールを追いかけた4カ月は、彼に何をもたらし、かの地に何を残したのか。その姿を現地で追った。

 オリベイラ・デ・アゼメイスはポルトガル北部のポルトから列車を乗り継ぎ、2時間ほど南下したところにある山間の町だ。

 人口は約6万人。辺鄙な町にはこれといって観光資源はない。もの好きなバックパッカーが立ち寄ることもあるけれど、目抜き通りを歩き終わるとさっさと別の町へと移っていく。

 今冬に突如決まった三浦知良のオリベイレンセへの移籍は、しばらく町の一番の話題となった。

「ミウラの加入はポルトガル全土で大ニュースとなるだろう」(アゼメイス日報)

 カズ・ミウラ。56歳のサッカー選手とはどんなものか、ひと目見ようと人々は赤い列を作り、丘の上に立つひなびたスタジアムに向かった。

 オリベイレンセは2部に昇格したばかりの小クラブで、5千人収容のスタジアムにはメインスタンドとバックスタンド片方しかない。

 客席の裏手にはのどかな農村が広がっていて、黄色の花が咲き乱れていた。遠くにはスペインとの国境があり、その先へと大陸は続いていく。小さな切符売り場のすぐそばで、ヤギが草をはんでいた。

Shin Toyofuku
Shin Toyofuku

 物置きとしても使用される記者室には戦術ボードが無造作に置かれていた。隠す気もないらしい。隅にMIURAの文字がある。どういう意味なのか、その上下には黒く太い線が引かれ強調されていた。

 チームを長く取材するエルミニオ・ロウレイロを訪ねる。

 アゼメイス日報に寄稿し、試合のラジオ中継の解説も務める。長くクラブを追う人だけに思い入れも強いだろう。加入以来、負傷もありほとんどプレーできていないカズについて聞くことが、どこか気が引けた。

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photograph by Shin Toyofuku

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