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<キングが語るベスト11弾> 三浦知良「ゴールは道を切り開く」

2020/04/16
たとえどんな苦境でも、日本サッカーにはこの男がいる。幾度となく希望のゴールを決め続けてきた、奇跡の男。こんなときだからこそ、と明るい笑顔で我々を照らすキング・カズが、勇気を届けた34年間のベスト11ゴールを語る。

 新型コロナウイルスをめぐる状況は悪化する一方である。申し込んでいた取材も、この情勢下では難しいだろうとなかば諦めていた。しかし、締切直前のある日、マスクをつけて窓を開け換気しながらやりましょう、とカズから連絡が入り、チーム練習が休みとなった日の朝に時間を割いてもらえることになった。

「こんなときだからこそ、前向きにふっきっていかないと。笑顔は大事だよ。ここのところずっとフーテンの寅さんのDVDを見ているんだけど、刺激受けてますよ」

 世間の沈鬱なムードを吹き飛ばすかのような笑顔を浮かべて迎えてくれたカズ。

 いつもより距離をあけてテーブルに座り、カズが淹れてくれたエスプレッソを前に話は始まった。ちょうど、Jリーグでも感染者が出始めたこともあって、本題に入る前に、現状についてカズが語り始める。

「これからもまだ選手の中からも確実に増えると思うのね。もう誰が悪いとかいう話ではないよね。明日、僕が感染してもおかしくない状況でしょ。リーグ再開をめざして体調を整えなきゃいけない部分と、いまの状況の中で、本当にチームとしても個人としても練習して動いていいのか、というところと、気持ちは複雑です。もちろん、僕らスポーツ選手は常に身体を動かしてなきゃいけない。仮に3日間休んだら、取り戻すのがものすごく大変ですから。だから、プライベートで安全な場所でなるべく人と接触しないようにして、体幹とかをやっているけれど、それすらもリスクゼロではないし、あるいは、休みの日に外で走ったりすることはいいのか、とか。家の中でも腕立てとか腹筋とかやれることはやっていますけどね。でもいまや再開がさらに延期になって夏までとかなる可能性も出てきたわけで、そうなるとまた練習のやり方も変わってくるし、それはそれで難しくなる。とにかくいまは目標が見えにくい状況だし、不安の中でひたすら終息を待つしかないというところですよね」

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photograph by Megumi Seki

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