#1072
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「家族に対しての目を他の人にも」WBCの最重要ピース…ダルビッシュ有の“伝える力”「質問で、相手を変えることができる」

2023/04/28
WBCでは侍ジャパン最年長としてチームをまとめ、若手投手陣と積極的に意見交換して士気を高めた。なぜ、あれだけのリーダーシップを発揮できたのか。パドレスでの日々の取り組みに、理由の一端が見える。(原題:[リーダーに問う]ダルビッシュ有「質問で相手を変えられる」Number1072号より)

ダルビッシュ有⇔侍ジャパン投手陣<コミュニケーションの極意>
①ピッチングを共通の話題として使う
②変化球を実践して説得力を持たせる
③「他人が見ている世界」を尊重する

◆◆◆

 4月16日、ペトコ・パークのブルワーズ戦で喫した今季2敗目を、ダルビッシュ有はさばさばと受け止めた。

「とにかく勝てそうな試合をつくるというのが一番の仕事。今は勝ちがついていないですが、援護次第では年によっては3勝している可能性もある。そこはあまり気にしていないですね」

 前回登板のメッツ戦に続き、2試合で味方打線の援護はゼロだ。しかし、今のダルビッシュにはそういった運、不運に動じる様子が全くない。この日は2年ぶりに12奪三振を記録し、7回1失点。だが、その唯一の失点が、牽制球の回数制限という新ルールに影響されての決勝点となっていた。

「でも、これも今のMLBの野球の一部。だから、こういうこと(新しい規則絡みのハプニング)が勝てる理由、負ける理由として、新しいルールの中で増えてきているということだと思う。今日、皆がここから学ぶことがある」

 0対1の競り負けを俯瞰するかのような口ぶり。この落ち着きの背景には、何があるのか――。

 世界に、日本野球の底力を知らしめた第5回WBC。14年ぶり3度目の優勝を果たした日本代表で、ダルビッシュは代替のきかない最重要ピースだった。日米通算188勝(WBC開幕時点)の実績、実力はもちろん、各国打者の知識、そして経験に裏打ちされたコンディショニング、投球術のノウハウが、36歳にはたっぷりと蓄積されている。何より、それらの情報を仲間に伝える力が飛び抜けていた。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Yukihito Taguchi

0

0

0

前記事 次記事