メジャーリーグがポストシーズンに突入した10月、鈴木誠也は日本にいた。激動の1年を過ごしたとは思えないほどの穏やかな表情で、肌寒くなった東京の街に馴染んでいた。「野球が180度違う」と表現したシーズンからの解放感はあっても、安心感はない。笑顔の奥には、2年目に向けたビジョンが描かれている。
「久々に若いときのたぎっている感覚があります。日本にいた最後の2、3年はやる気はあるけど、やってやろうという感覚が正直なかった。メラメラしていないというか、漠然と1日が過ぎるというか……。こういう世界にいて高ぶってこないのが、すごく嫌でした。でも今は、プロ入りした3、4年目のときのような感覚でいます」
カブス移籍1年目は111試合で打率.262、14本塁打、46打点、9盗塁、出塁率と長打率を足したOPSは.769という成績を残した。王貞治、落合博満に次ぐプロ野球史上3人目の6年連続打率3割&25本塁打を記録した日本時代と比べれば物足りない数字だろう。だが「妥当じゃないですか。むしろ、もうちょっと打てないと思っていました」と、あっけらかんと認める。照れ隠しではなく、本心だった。
心技体、すべて足りなかった。開幕から10試合は打率.429、4本塁打、11打点。ナ・リーグ月間最優秀新人まで受賞した4月も「甘い球を捉えられてもないし、振れてもいない。自分の中では違うなと思っていた」と吐露していた。
メジャーでは野手のパワー化、投手の高速化が進んでいる。100マイル(約160km)を投じる投手も珍しくなくなった。日本より身長が高く、リーチも長い。さらに高いマウンドから投げ下ろせば、同じ18.44mの距離感も違ってくる。制球面も高いレベルにある。
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