5打席連続本塁打、史上最年少三冠王、“世界の王”を超えて伝説となった22歳。期待と重圧を背負って臨んだ頂上決戦の舞台で輝かしい'22年を締めくくる、はずだった――。
一点を見つめる。
視線の先ではオリックスブルーのユニフォームが歓喜に飛び跳ね、胴上げが始まった。その一部始終を一塁側ベンチからじっと見届けた村上宗隆は、最後にオリックスナインのいるグラウンドに一礼してベンチ裏へと下がった。
「多くの方々にたくさん期待してもらったにもかかわらず、期待に応えられなかったです。さらに努力していきたいと思います」
球団広報を通じて語った日本シリーズ敗北の短いコメント。そこには不完全燃焼に終わった後悔と悔しさが込められていた。
どこか自分を見失ってしまった戦いだった。
「去年と同じオリックスさんとの対戦。向こうは去年のリベンジじゃないですけど、それくらいの気持ちでくることは分かっているので、僕らもそれに立ち向かって、受けずに、挑戦してチャレンジャーとして戦っていければいいなという風に思っています」
こう語って臨んだ2度目の日本シリーズだった。言葉通りに結果を恐れず、開幕戦から思い切ってバットを振ったのは確かである。
開幕戦でぶつかった2年連続投手四冠のオリックス・山本由伸とは、過去通算9打数1安打。しかし56本塁打を放って三冠に輝いた今季は交流戦でも対戦はなかった。
「見ての通りの、誰もが認める日本のエースだと思いますし、日本シリーズという最高の舞台で戦えることがすごく光栄です。(対戦成績は)意識しないですね。本当に短期決戦なので、勝てるように頑張ります」
ただ注目の三冠対四冠の対決は、山本の思わぬアクシデントで不完全燃焼に終わってしまう。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Nanae Suzuki