#1062
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[シリーズ観戦記]東京、大阪、そして熊本

2022/11/04
スタンドで55番を眺めながら、燕党の筆者は村上宗隆の同級生たちの言葉を反芻していた――。

 一段と冷え込んだ寒空の下、26年ぶりに日本一となったオリックス・バファローズの優勝セレモニーが続く。一塁側ベンチ前では高津臣吾監督を筆頭に、ヤクルトの選手たちがその光景を静かに見つめていた。一塁側スタンドからなので、選手たちの表情はわからないけれど、背番号《55》の大きな背中を、僕はじっと見ている。

 2022年の日本シリーズは4勝2敗1分でオリックスが制した。全7試合をいち観客としてスタンドから観戦した。特に村上宗隆の全打席は息をつめて祈るような思いで見つめていた。この間、村上にまつわる「二人の同級生」に話を聞いた。彼らはともに、現在は野球から離れている。

 一方は大学で野球を辞め、一方はオリックスに入団したものの、難病のために野球を諦めていた。学生時代にしのぎを削った二人のライバルたち。九州学院高校時代のチームメイトで、現在は地元に戻り信用金庫に勤めている田上将太に話を聞いたのは、日本シリーズ開幕当日のことだった。

「あの瞬間、“この数カ月で大きな差がついちゃったんだな……”って感じました。嬉しい反面、悔しさもあり、まわりからは“村上はあんなにすごいのに、お前は何してんの?”っていじられたり。あの頃は、それが辛いこともありましたね……」

 彼が語る「あの瞬間」とは、2018年9月16日、村上がプロ初打席初本塁打を記録したときだ。

「当時、僕は日大の1年生で、夜間練習中に村上の初ホームランを知りました。その後も大学2年、3年と必死に練習をしても思うような結果が出ませんでした。その間、彼はどんどん成績を伸ばしていった。嬉しいけど悔しい。複雑な思いでした」

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photograph by Hideki Sugiyama

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