具志堅用高に次ぐ日本人ボクサー歴代2位となる世界タイトル12回連続防衛を誇る“バンタムのレジェンド”山中慎介は、世界戦における井上尚弥の試合解説を数多くこなしている。
状況に応じて戦い方を変化させ、勝利を手繰り寄せることができる「対応力」もまさにモンスター級。特に顕著だった試合と言えるのが、山中も会場のグラスゴーに出向いたWBSS準決勝のエマヌエル・ロドリゲス戦(2019年5月18日)である。
「現地で見た感覚で言うと初回、絶妙な距離感で戦っているなという印象があったのはむしろロドリゲスのほうでした。これ以上ちょっとでも入ってしまったら危ないという距離をうまく保っていて、パンチ自体の力はそんなになくても打つタイミングも良かった。どちらにポイントがつくのかが難しいラウンド。逆にロドリゲスからすれば上々の滑り出しだったと思います」
すぐ決着がつくような試合にはならないかもしれない。インターバルで抱いたそんな予感は、2回の立ち上がりを目にしたときにあっさりと覆されたという。
「初回はロドリゲスの圧力を感じたのか、下がり気味になって体が少し浮いているように見えました。それが2ラウンドに入って、下半身、すなわち足に一気に力を入れてきたんですよ。井上選手は僕と同じで下半身の力を吸い上げてパンチのパワーに変えるタイプ。距離とか、パンチのタイミングを早速つかんだんでしょうね。体に力を入れる分、距離も微妙に近くなる。足の位置、顔の位置、数センチ分です。そうするとそれまでロドリゲスに対して微妙に当たらない距離が当たる距離になる。そしてあのダウンシーンがありました」
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