スター選手たちが途方もない高額契約を結ぶMLBで、大谷の現年俸は明らかに超格安だ。だが、彼は2022年に年俸調停権を獲得し、さらに翌年オフにはFA市場に躍り出る。その際、もし昨季同様の歴史的な成績を挙げると、一体どんな契約が待っているのか。球団フロントのキャリアを持ち、米メディアの中で“選手分析の第一人者”と評される『FANGRAPHS』の記者が、前代未聞となるであろうその契約の中身を、明晰に予測する。
大谷翔平は2021年シーズンに米球界で歴史を作り、文句なしの満票でア・リーグMVPに輝いた。史上最多安打や史上最多本塁打のような新記録を樹立したわけではないが、MLBという最高峰レベルの球界で、最も危険な打者の一人となり、最も優れた投手の一人にもなった。一昨年まで1シーズンをフルでプレーできたことが一度もなかったにもかかわらず、とんでもないことをやってのけた。
しかもわずか2年前の2020年には、打率1割9分と大不振に陥っていた。投手としては2試合にしか登板できず、しかもその2試合で打者16人に対し四球を8つも与えるという惨状だった。
大谷がMLBの年俸調停という不条理なシステムを避けて2年850万ドルの契約を結んだのは、その酷いシーズンの後だった。そのため歴史的なシーズンを送った大谷の2021年の年俸は、わずか300万ドル。あまりにばかげているとしか思えない金額だった。
難航していたMLBと選手会の労使協定が遂に締結された後、FA獲得やトレードが怒濤のように次々と決まり、開幕前の米野球界が契約の話題で持ち切りになるなかで、大谷のことはほとんど話題にならなかった。彼が今季もエンゼルスでプレーすることが決まっていること、今季の年俸もすでに550万ドルと決まっていることがその理由だ。
しかし今から1年後、大谷は球界の注目を一身に浴びるだろう。MLBが取り決めた選手保有のルールに従い、2022年は年俸調停権を獲得し、その翌年オフには何の制限もないFA市場に躍り出る。
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photograph by Takao Kawasaki(Illustrations)