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[俊英棋士検討会]藤井聡太の“最強の一手”とは? 三枚堂達也×高見泰地×八代弥

2022/01/20
左から八代弥、高見泰地、三枚堂達也
鋭い攻め将棋で藤井にプロ2度目の黒星をつけた三枚堂、相矢倉戦を得意とし、昨年2度藤井と相まみえた八代、世代初のタイトルを獲得し、藤井と親交のある高見の同学年3棋士が集結。解説にも定評がある9学年上の実力派が四冠王の“絶妙手”について大いに語り合った。

高見 先日、新人王戦を優勝した伊藤匠君と藤井竜王の記念対局を解説しました。伊藤君もかなり食い下がったけど、藤井竜王の貫録勝ち。中盤から藤井優勢になり、そこから安全勝ちではなくぎりぎりしのぐ危険な順を選ぶんです。サーカスみたいな攻防が続いても、確かにソフトの評価値は落ちないし、藤井さんに聞いたら「何となく大丈夫と思った」といってた(苦笑)。伊藤君もしょんぼりしていた気がする。

八代 同じ負けでも、相手に際どいところを通されての負けはかなり堪えますよ。

三枚堂 駒がいっぱいぶつかると複雑で人間は処理落ちしちゃうけど、藤井さんは高性能のパソコンみたい。何でこんなに速く読めるんでしょう。多くのプロが驚かされたであろう発言「(自分には)脳内将棋盤がない」を考えると、根本から違うのかも。

高見 ただ、対局していないときは普通の青年ですよ。昨年、ABEMAトーナメントで同じ「チーム藤井」の伊藤匠君が菅井(竜也)さんと戦った試合を藤井さんと見ていました。そこで「観る将」のように盛り上がったんです。伊藤君が逆転に成功してふたりで喜んでいたら、1手詰めを逃して、藤井さんががっかりして。でも、そのうつむいている間に高速で読んで「まだ勝ってますよね」といわれた(笑)。

三枚堂 喜怒哀楽がすごかったよね(笑)。

高見 その後のトーナメント決勝▲藤井-△佐々木勇気戦はやばかったです。横歩取り(空中戦とも呼ばれ、激しい戦型のひとつ。終盤まで緻密に研究されている)で狙い撃ちされて、伊藤君も「これがあると伝えておけばよかった」と悔いていた。しかし、自陣に手を入れるタイミングと▲7五桂から▲8三歩の寄せが完璧で、それを持ち時間5分、秒読み5秒のフィッシャールールでやってのけた。本人は対局後に平然と「よくわからなかった」「ちょっと間違えましたかね」って(笑)。

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photograph by Kanekoyama

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