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[ライバルが明かす松坂との物語(7)]斉藤和巳「投手5冠でもかなわなかったもの」

2021/11/05
最後の対戦は'06年プレーオフ第1ステージ第1戦。緊迫した投手戦は、松坂が6安打完封の快投を演じ、西武が1-0で勝利した
沢村賞を2度獲得しても、投手5冠を達成しても、「数字で松坂に勝たなければ」と満足はしなかった。それほどまでにこだわった名右腕の胸の内とは。

「ライオンズを倒さないことには優勝できない。大輔と投げ合う日は、ホークス打線が強力とはいっても4点、5点を取れるイメージは持てません。自分としてはとにかく抑える。序盤に点を奪われたとしても追加点を与えないように頑張るしかない。そんな思いで投げてましたね」

 2000年代、ホークスとライオンズは激しい優勝争いを繰り広げたが、斉藤和巳と松坂大輔の投げ合いは、パ・リーグの「華」と呼ぶにふさわしい戦いだった。

 ふたりの「デュエル」は10回に及んだが、対戦成績は斉藤の5勝、松坂の4勝と拮抗。中でも'06年10月7日に行われたプレーオフ第1ステージ初戦の投げ合いは、球史に残る試合として語り継がれている。

「大事なプレーオフの初戦、ひたすら耐えなければいけない試合でした。大輔との対戦は常に我慢です。厄介なことに、大輔は5回以降にエンジンがかかってきますから、こちらも一歩も引くわけにはいかない。でも、僕が我慢しきれずに7回に1点を取られてしまったんです。0点に抑えていれば負けることはないというのが僕の思いでしたから、本当に悔しかった」

 ふたりの投げ合いはこれが最後となってしまったが、斉藤と松坂は投手部門のタイトルを激しく争ったライバルでもあった。

 斉藤はブレイクスルーした'03年に最多勝(20勝)、勝率、防御率で3冠を達成するが、対する松坂も完封数でトップに加え、防御率はまったく同じ2.83。'04年は松坂が完封と防御率、'05年は松坂が完封と奪三振、斉藤が勝率でリーグナンバーワンと、ふたりが主なカテゴリーの数字を激しく争った。

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photograph by Hideki Sugiyama/Asahi Shimbun

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