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[日本柔道黄金期の立役者たち]5年目の逆襲が生んだ金ラッシュ

2021/08/15
混合団体含め15種目で金9個と他国を圧倒した日本柔道。その栄光の裏には、指導者やライバルの存在によって果たすことができた数々のリベンジがあった。

 五輪史上最多となる男女計9個の金メダル。銀、銅を含めて計12個のメダルを獲得した柔道日本代表。その存在感を東京の地で世界に向けて示した。

 好成績の原動力となったのは、リオデジャネイロ五輪で味わった悔いにある。今大会の初日に登場した60kg級の高藤直寿にとって、銅メダルに終わったリオは、ただ悔しさをかみしめた場所だった。涙を流しつつ、「次は金メダルを」と誓った。

 自分に何が足りないかを考えた。前のめりになりがちなのが課題だと考え、我慢強く戦う姿勢を身につけていく。その成果が如実に現れたのが決勝だった。容易に隙を見せない相手に、攻撃を仕掛けはしても短気になることなく、じっくり構えて勝機を探す。やがて相手に指導が3つ積み重なり、反則勝ち。5年間追い続けた栄冠をつかんだ。

「あのときは下を向いてばかりでした」

 81kg級の永瀬貴規はリオをそう振り返る。早くから天才と言われ、「金メダルに近い」と期待を集めたが、力を出し切れず、結果は銅メダル。表彰台では、金色のメダルをぶら下げた選手がまぶしかった。2017年の世界選手権で右膝靱帯断裂の重傷を負うも復帰を果たし、'19年は国際大会4連勝。迎えた2度目の大舞台では失敗を繰り返すことはなかった。世界的に激戦区であるこの階級で、日本勢21年ぶりの優勝を飾った。

「辛いことのほうが多かったですが、僕の長所は気持ちが折れず、最後まで攻め抜く姿勢。それが出せました」と涙をぬぐった。

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photograph by Ryosuke Menju/JMPA

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