#1033
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[日本野球の夢の結実]侍ジャパン「ゲーム世代の爽快なエンディング」

2021/08/12
プロ1年目で抑えをつとめた栗林は全試合に登板し2勝3セーブと大活躍。甲斐に抱え上げられ笑顔が弾けた
1984年ロサンゼルス五輪以来、37年ぶりの頂点へ登り詰めた。オールプロで挑んでも幾度となく跳ね返されてきた金メダルへの壁。悲願達成の鍵は若き力の抜擢と、選手、指揮官のコミュニケーションだった。

 マウンドの栗林良吏が両手を広げる。駆け寄った甲斐拓也が抱え上げると、日本の守護神は誇らしげに右の拳を横浜の空に向かって突き上げた。

 その2人を目がけて次々と選手たちが飛びついていった。

 日本球界悲願の金メダル奪取の瞬間だ。

「みんな一生懸命やってくれて、その思いがグッときました。1つも楽な試合はなかったけど、選手の金メダルを取りたいという思いが結束した結果だったと思います」

 マウンドで繰り広げられる歓喜のセレモニーをベンチ前から見守った稲葉篤紀監督は、込み上げる涙を隠そうとはしなかった。

 最後まで厳しい試合の連続だった。

 準決勝では同点の8回に山田哲人のタイムリー二塁打で3点を奪って宿敵・韓国を振り切った。そして迎えた決勝の相手は、準々決勝で延長の末サヨナラ勝ちしたアメリカとなった。

 先発の森下暢仁が立ち上がりから得意のカーブで米打線を翻弄する。金メダルへの最初の扉をこじ開けたのは、チーム最年少の村上宗隆だった。

「森下さんが本当に素晴らしいピッチングをしてくれていたし、あそこで何とか1点取ればジャパンの流れになるんじゃないかという思いで打席に立っていました」

 3回、ソフトバンクでプレーするニック・マルティネスの外角チェンジアップを、逆らわずに逆方向に打ち返す。打球は左中間席に飛び込む先制ソロとなった。8回には1番の山田哲人の右前安打と送りバントの1死二塁から吉田正尚がしぶとく中前に落とした。この打球に一度は三塁に止まった山田だが、中堅手からの返球が三塁ベンチ方向に大きく逸れるのを見て一気に本塁に突入。捕手のタッチを掻い潜って右手でホームを擦って2点目を刻んだ。

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photograph by Naoya Sanuki/JMPA

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