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[3度目の大舞台へ]石川佳純「今こそ攻める勇気を」

2021/07/15
'16年リオ五輪以降、若手の台頭が著しく、高速化が進む卓球界で、名将・邱建新らとともに、進化の可能性を信じ、挑戦し続けてきた。自身3度目となる五輪では、悔いのない戦いで完全燃焼する。

 1年延期された自身3度目の五輪イヤーは、最高の幕開けだった。

 2021年1月17日、全日本卓球選手権大会の最終日。前年に続き女子シングルス決勝に勝ち上がった石川佳純は'18、'19年連覇の伊藤美誠と対戦し、あとがないゲームカウント1-3からの大逆転劇で、5年ぶり5度目の全日本女王に返り咲いた。

「胸を借りて戦おう、リードされても諦めずに戦おうと最初から決めていました」

 勢いを増す次世代の台頭。とりわけ'16年リオデジャネイロ五輪後の突き上げはすさまじく、伊藤、平野美宇、早田ひなといった成長著しい年下の選手たちに、「もう勝つのは無理なんじゃないか」と思ったこともあった。

 だが、その度に言い聞かせたことがある。

「絶対に諦めない」

「自分はまだ変われる」

 試合後の優勝インタビューでは、「変化」を求め葛藤し苦しんだ月日と、自分を信じ支えてくれた人々への感謝がこみ上げ、言葉をつまらせた。

 その間、18秒。

 無観客の会場に流れる静寂が、彼女の乗り越えてきた苦悩をかえって雄弁に物語っていた。

 変化への挑戦は'17年の年明けに始まった。

「1月の全日本選手権で4連覇を逃してしまって。その前からボールの材質が変わって自分のプレーに大きな影響が出たし、この頃から対戦するのはほぼ自分より若い選手ばかりになりました」

 短い言葉の中にも、彼女を苦しめた要素が凝縮している。

 まず、4連覇のかかった全日本選手権で、リオ五輪のリザーブに甘んじた平野が悔しさをバネに大躍進。3カ月前の女子ワールドカップで日本人初優勝を果たした勢いを駆って決勝へ進出し、大会3連覇中の石川に対して第1ゲームの立ち上がりからレシーブの強打を浴びせる攻めの姿勢を見せた。さらに当時、世界を驚愕させた“超”高速卓球で石川を圧倒し、16歳の史上最年少女王に輝いた。

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photograph by Kosuke Mae
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