新たにカップルを組み、米国に拠点を移して挑んだ今季。コロナ禍に翻弄されながらも、着実に技術と絆を深めてきた2人に、全日本の大舞台で試練が訪れる。予想外のアクシデントが彼らにもたらしたものとは。
12月27日、長野県のビッグハットに集まったファンが、祈りをこめて拍手を送る。フリーダンスの演技直前、名前がコールされると、高橋から先に「頑張ろうね!」と声をかけ、村元の手を握った。
高橋にとってまだデビュー2戦目。11月のNHK杯では、村元がリードする様子もあったが、今回は事情が違った。村元は左脚を負傷し、痛みをこらえての本番。「大丈夫」を連呼する姿をみて、「僕がリードしなきゃ」と高橋は笑顔を作った。怪我をした側も、心配する側も、同じ気持ちだからこそ、気遣いが透けて見える。村元はふと思いつき「See you in Heaven」と返した。
フリーダンスの『ラ・バヤデール』では、ニキヤとソロルの2人が幻想の中でダンスを踊るシーンを演じている。主人公になりきる気持ちと、困難の先に幸せがあるという意味を込めた「天国で会おう」というジョーク。しかも英語。高橋の思考回路が一瞬止まり、緊張や雑念が飛んだ――。
振り返れば、高橋がアイスダンス転向を宣言したのは2019年9月のこと。'20年1月から村元と共に、アイスダンスの巨匠マリーナ・ズエワのいる米国に渡り、練習を開始した。11月のNHK杯でデビュー。順位こそ3位だったが、2人が持つ華やかさが光り、ファンの期待に応えた。
「僕たちとしては練習の成果を全然出せなかったけれど『素敵な雰囲気で滑ってくれた』というコメントが多くて、じゃあ満足いく演技が出来たらもっと伝えることが出来る、という確信を持てました」
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photograph by Nobuaki Tanaka