#989
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<王者撃破の真相> エディー・ジョーンズ「すでに青写真は描かれていた」

2019/11/01
試合前、ハカを披露するオールブラックスに対し、イングランドはV字の陣形で接近する異例の対抗策を取った。
W杯3連覇を狙う王者の夢を叩き潰したのは、前大会の雪辱に燃えるラグビー発祥国だった。その裏には、4年前のジャパンを率いた知将による、2年半にも渡る周到な準備のプロセスがあった。(Number989号掲載)

 またも、エディー・ジョーンズの「傑作」が生みだされた。

 世界が注視するラグビーワールドカップ準決勝という舞台で、オールブラックスを鮮やかに料理して見せた。

 試合後の会見に現れたエディーは、喜びを押し隠していた。神妙に「オールブラックスは素晴らしいチームです」と切り出し、リスペクトを示す。しかし、会見途中にこの一戦に懸けたプライドがにじみ出る。

「われわれは、この準決勝のために2年半に及ぶ準備を重ねてきました。オールブラックスは1週間でしょう?」

 2017年5月。京都で組み合わせ抽選が行われ、その翌日、私は神戸でエディーにインタビューをした。その時点から、'19年10月26日土曜日のことは予見されていた。

「プールステージは1位で通過します。準準決勝の相手はウェールズになるでしょう(現実はオーストラリアになった)。そして準決勝では、オールブラックスとの対戦になります」

 そこでエディーはひと呼吸置いてから言った。

「勝ちます」

シックスネーションズの混乱も予定通り。

 すでに青写真は描かれていた。'16年、'17年のシックスネーションズを連覇して、協会内での地位を安泰にはしていたが、'18年にはあえて「チームに混沌を起こします」と話した。

「'18年は、特定の試合の指揮をコーチ陣に任せます。ハイプレッシャーの中で仕事をこなすことで、W杯本番にはいい準備が出来るようになるでしょう」

 案の定、'18年のシックスネーションズは5位に転落。イングランドのメディアは「ピークは過ぎたのではないか?」と騒々しくなり始めたが、代わりになる人材などいない。そして'18年11月にロンドンにオールブラックスを迎え、結果は、15対16の惜敗。勝てそうな試合ではあった。が、その時点でのイングランドはオールブラックスと比べるとナイーブだった。

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photograph by Atsushi Kondo

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