またも、エディー・ジョーンズの「傑作」が生みだされた。
世界が注視するラグビーワールドカップ準決勝という舞台で、オールブラックスを鮮やかに料理して見せた。
試合後の会見に現れたエディーは、喜びを押し隠していた。神妙に「オールブラックスは素晴らしいチームです」と切り出し、リスペクトを示す。しかし、会見途中にこの一戦に懸けたプライドがにじみ出る。
「われわれは、この準決勝のために2年半に及ぶ準備を重ねてきました。オールブラックスは1週間でしょう?」
2017年5月。京都で組み合わせ抽選が行われ、その翌日、私は神戸でエディーにインタビューをした。その時点から、'19年10月26日土曜日のことは予見されていた。
「プールステージは1位で通過します。準準決勝の相手はウェールズになるでしょう(現実はオーストラリアになった)。そして準決勝では、オールブラックスとの対戦になります」
そこでエディーはひと呼吸置いてから言った。
「勝ちます」
シックスネーションズの混乱も予定通り。
すでに青写真は描かれていた。'16年、'17年のシックスネーションズを連覇して、協会内での地位を安泰にはしていたが、'18年にはあえて「チームに混沌を起こします」と話した。
「'18年は、特定の試合の指揮をコーチ陣に任せます。ハイプレッシャーの中で仕事をこなすことで、W杯本番にはいい準備が出来るようになるでしょう」
案の定、'18年のシックスネーションズは5位に転落。イングランドのメディアは「ピークは過ぎたのではないか?」と騒々しくなり始めたが、代わりになる人材などいない。そして'18年11月にロンドンにオールブラックスを迎え、結果は、15対16の惜敗。勝てそうな試合ではあった。が、その時点でのイングランドはオールブラックスと比べるとナイーブだった。
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