時代と国民が求めた第72代横綱が土俵を去った。
遅すぎた。もっと見たい。引き際に賛否が渦巻く。
最後の三日間から見えた寡黙な横綱の心身の葛藤を、入門当時から取材を続けてきた記者が描いた。
遅すぎた。もっと見たい。引き際に賛否が渦巻く。
最後の三日間から見えた寡黙な横綱の心身の葛藤を、入門当時から取材を続けてきた記者が描いた。
東京都内で稀勢の里が一人で暮らすマンション高層階の部屋からは、天気が良い日は東京スカイツリーがくっきりと見える。その向こうには、うっすらと富士山までがそびえる。青空に溶け込んだ景色は見とれるほどに美しく、思わず小さく手を合わせる時もあるという。「晴れている日は本当にきれい。朝は必ずといっていいほど、窓から見ている」と言ったのは、昨年12月下旬のことだ。土俵人生の岐路に立たされていた日本出身横綱の一日は、日本が誇る頂への静かなる願いから始まっていた。
2019年1月13日。角界の正月を告げる大相撲初場所は異様なムードに包まれながら、幕を開けた。絶大な人気を誇る稀勢の里が進退を懸ける。序盤戦から負けが込めば力士生命は一気に極まる可能性があるだけに、初日の結果は命運を握っていた。
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photograph by Takashi Shimizu/JMPA