その道の大家が自分の専門分野を素人に平易に分かりやすく語る。それがかつての新書の王道だった。本書はまさしくそれ。著者は水産資源学、魚類生態学の権威、「魚博士」だ。開高健“釣り文学”の第一作『私の釣魚大全』の餌談義に著者の名が出てくる。餌のゴカイ不足に悩んだ餌問屋の老人がビニールでゴカイの擬餌を作ろうと思い立つ。相談した相手が著者だった。ゴカイより優れた“ロッカイ”として売り出し、失敗する愉快な話だ。碩学が餌問屋の老人の“相談役”というのが嬉しくなる。本書ではそんなエピソードで想像される人柄が滲み出る。
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